2011-01-01から1年間の記事一覧

シンガポール通信ーデカルト「情念論」2

前回述べたように、デカルトは心の論理的な機能に関しては、身体の機能とは独立していると考えていた。そしてこれは明示的には記述されなくても、西洋哲学の基本的な考え方である。ところが心の機能は体の機能と密接につながっている部分がある。例えば悲し…

シンガポール通信ーデカルト「情念論」

デカルトはあの有名な「我思う、ゆえに我あり」によって、思考する主体としての個々人の自由意志の存在を指摘し、それがすべての哲学的思考の基本となるべきことを指摘したことで良く知られている。このブログでもなんども取り上げたが、西洋哲学においては…

シンガポール通信ー京都の師走

クリスマス休暇を利用して帰国している。明日27日には再びシンガポールに戻る。シンガポールでは、人々はクリスマスは休暇は取るが、12月終わりから1月初めの新年にかけてはあまり休暇を取る人はいない(一応1月1日は休日だけれども)。むしろChinese…

シンガポール通信ー音声入力はなぜ使われないか

日英自動翻訳ソフトに関して書いた私のブログ記事に対して以下のようなコメントが寄せられた。「12月18日の新聞に小さく記事が出ていた。成田空港でレンタルで『音で通訳するスマホサービス』が開始された。日本語と英語、日本語と中国語の2種類の通訳がで…

シンガポール通信ーMRTのトラブル

先週末から、シンガポールのMRT(Mass Rapid Transit)のトラブルが続いている。MRTはシンガポールの大量輸送システムで、日本で言えばJRに当たるだろう。都心部では地下を走っているので地下鉄と呼びたくなるが、郊外では高架鉄道になっているので、地下鉄と…

シンガポール通信ー岩波新書「メディアと日本人」2

さてもう一度この本の内容をまとめてみよう。この本に書いてあるのは以下のような事である。1.インターネットの普及に伴いインターネットの使用時間が増えている。これは若年層に限るわけではなく、すべての層で増加の傾向が見られる。むしろ、携帯電話に…

シンガポール通信ー岩波新書「メディアと日本人」

先週帰国した際、書店で岩波新書の本書を見つけたので購入して読んでみた。メディアの利用状況、特にインターネットとこれまでのメディアである、テレビ・新聞・書籍などの利用状況を関係付けて記述してある。本書は、著者が定期的に実施しているアンケート…

シンガポール通信ーシンガポールの12月

シンガポールは11月後半から雨期に入る。雨期といっても私がシンガポールに来た4年前までは、少し雨降る日が多いかなといった程度であり、しかも雨と言ってもいわゆるスコールで、しばらく激しく降るとさっとやんでしまい、青空が広がるといういわば男性…

シンガポール通信—スティーブ・ジョブス3

スティーブ・ジョブスの話題が続くけれども、歴史、特に技術史には必ず残る人物であるだろうから、もう少しこの本の読んだ感想を書いておきたい。もう1つ重要なのはアップルにおける製品開発の姿勢としての垂直統合方式(クローズドポリシー)と、それに対…

シンガポール通信ースティーブジョブス2

(前回より続く)ワークショップのゲストスピーカーとしてスティーブ・ジョブスが招待されることは、実は聴衆にはあらかじめ知らされていなかった。多分ワークショップのオーガザイザ側がサプライズとして用意したものだったのかもしれない。彼が現れたのは…

シンガポール通信ースティーブ・ジョブス

スティーブ・ジョブスの伝記が発売になっている。たぶん全世界で何十万、何百万、もしかしたらそれ以上の人たちが、ブログやFacebookなどでこの本の感想を発信しているだろう。あえて私がという気もするけれども、私自身の感慨のようなものもあるので、記し…

シンガポール通信—日英自動翻訳は使えるか2

前回は脱線してしまったので、今回は少し日英自動翻訳の実力について書いてみよう。日英自動翻訳のソフトは、いくつかの会社からソフトウエアパッケージが発売されている。また、Google翻訳、Yahoo翻訳のような無料で翻訳してくれるサイトもある。さらには日…

シンガポール通信ー日英自動翻訳は使えるか?

現在、昨年オーム社から出版した本の英語版の出版を狙って、その英訳を行っているところである。まだ出版社が決まったわけではないが、国際会議の論文集の出版や、英文の論文の出版にここ2年ほどかかわっているので、まあ英語の本の出版社と関係がないわけ…

シンガポール通信ー文化庁メディア芸術祭

現在またまた帰国中である。今回は私の属する研究所IDMIと日本企業との共同研究を行うためのミーティングを日本企業数社と行うのが主な目的である。と同時に京都で文化庁メディア芸術祭が開催されており、そのうち京都芸術センターで開催されているアート展…

シンガポール通信ースノーボール・アース2

「スノーボール・アース」、つまり氷に覆われた地球という考え方が私たちの常識に反するため、なかなか受け入れられないという事を前回書いた。それは学者の間でも同様であって、このアイディアは最初の頃は学会では散々に酷評されたり無視されたらしい。最…

シンガポール通信ースノーボール・アース

先週帰国した際に、早川文庫の「スノーボール・アース」を本屋で見つけたので買い込んだ。この週末に読んでみたが大変面白く、1日で読み終えた。少し脱線するけれども、早川文庫はSFで有名である。最近はSFは時々読む程度であるが、かっては大変はまってし…

シンガポール通信ー文化とコンピュータの国際会議3

いずれの国際会議でも、レセプションやバンケット(宴会の意味)が重要なイベントになっている。文化とコンピュータの国際会議でも同様に、レセプションやバンケットには力が入っていた。文化とコンピュータの国際会議の最後の話題として、レセプションとバ…

シンガポール通信ー文化とコンピュータの国際会議2

文化とコンピュータの国際会議に併設して展示会が行われた。この国際会議は、基本的には技術系の研究者を対象とした国際会議である。そのような国際会議では、通常は展示も技術をアピールするデモなどが展示の中心になる。しかしながら、今回は文化との関係…

シンガポール通信ー文化とコンピュータの国際会議

第2回目の文化とコンピュータの国際会議が京都大学で開催されたので参加して来た。これは京都大学情報学研究科の石田先生が中心となって行われているもので、第1回目は2年前に同様に京都大学で行われた。文化とコンピュータに関する研究は、いわば文系と…

シンガポール通信ー安西佑一郎「心と脳」

先日帰国した際に、本屋で岩波新書の新刊として安西佑一郎先生の「心と脳」を見つけたので、早速購入しこの週末に読んでみた。副題に「認知科学入門」とあるように、認知科学のこれまでの歴史、最近の動向、そして未来への期待などをまとめた本である。一読…

シンガポール通信ー「荀子」を読む

9月から10月にかけて出張が重なり、週末の休みを取ることがあまり出来なかった。来週再び日本で行われる国際会議に出席のため帰国するが、この週末は久しぶりにシンガポールの自宅でゆっくり休養できた。帰国の度に買い求めて来た岩波文庫本がかなりたま…

シンガポール通信ーシンガポールのファッションと四季

現在日本に帰国中である。今年の日本はなかなか秋の訪れが遅いようで、未だに日中は汗ばむ陽気である。朝夕も上着を必要としない気候である。とはいいながら、徐々に秋が深まっているようではある。それは街を行き交う人のファッションを見るとわかる。まだ…

シンガポール通信ーエンタテインメントの国際会議:ICEC2011

エンタテインメントに関する国際会議ICEC(International Conference on Entertainment Computing)の開催に毎年参画しているが、今年のICECはカナダのバンクーバーで10月5日から8日まで開催された。参加者は100人〜150人の比較的小規模の国際会議で…

シンガポール通信ーオンライン麻雀

いつの頃からか確実なこと忘れたけれども、オンライン麻雀をたしなむようになった。もう10年近くになるのかもしれない。出張とか会食などで夕方の日程が詰まっていない限り、毎日の仕事が一段落し少しリラックスしたくなる午後7時か8時頃に週何回かはオ…

シンガポール通信ースティーブ・ジョブスの死

現在カナダ、バンクーバーに滞在中である。エンタテインメント技術に関する国際会議ICEC(International Conference on Entertainment Computing)に出席するためである。このブログでも何回か書いたけれども、この国際会議は10年ほど前にこの分野で研究活動を…

シンガポール通信ー京都大学サマーデザインスクール

先週京都大学で開催された「京都大学サマーデザインスクール」に、講師として参加してきた。これは、京都大学の情報学研究科・工学研究科・経営管理大学院などが、先行の枠を超えて学生達の問題解決に対する実践力を養うためのデザインスクールである。ここ…

シンガポール通信ー土佐尚子アート展3

土佐尚子さんの個展がシンガポールのジャパン・クリエイティブ・センターで現在開催されている。シンガポールはまだまだアートに対する理解度は高いとは言えない国なので、来場者が十分あるかどうか心配したが、なんとか順調に進んでいる。また、この個展に…

シンガポール通信ー横浜トリエンナーレ

現在京大で行われるワークショップ参加のため帰国しているが、合間をぬって横浜で開催されている現代アートの展示会である横浜トリエンナーレに行ってきた。絵画、彫刻、ビデオ、インスタレーションなど様々な作品が展示されている。三連休中と言うこともあ…

シンガポール通信ーIDMIの技術説明会

先週、私の研究所であるIDMIの日本企業に対する技術説明会を行った。技術説明会というのは、研究所で開発した技術を企業向けに公開し、気に入った技術を買ってもらおうという催しである(「技術移転」という難しい言葉を使うが)。日本では10年以上前から、…

シンガポール通信ー土佐尚子アート展2

これは土佐さんのデザインした山水画をガラス板に彫刻した作品で、ガラス職人とのコラボ作品。スポットライトを当てると、山水画が影絵のように壁面に投射される。 これは新作の「歌舞伎者」。顔写真をとると、コンピュータがふさわしい歌舞伎の隈取りパター…