シンガポール通信ー文化とコンピュータの国際会議

第2回目の文化とコンピュータの国際会議が京都大学で開催されたので参加して来た。これは京都大学情報学研究科の石田先生が中心となって行われているもので、第1回目は2年前に同様に京都大学で行われた。

文化とコンピュータに関する研究は、いわば文系と理系の境界領域の研究分野であり、ごく新しい学問分野である。同じく京大の土佐先生などが提唱して来た分野であるが、2年前はまだ国際会議を継続的に開催できるかは疑問であり、ある意味でテスト的に開催された。

その後、この分野の研究者が徐々にではあるが現れて来たので、継続的に開催することを狙ってその第2回目を今回開催されたと解釈できるだろう。私自身はエンタテインメントの分野を研究領域としているが、当然文化も関わってくるのでこの会議には最初から注目していた。


文化とコンピュータの国際会議の会場である京大時計台前の見事な楠の大木。



MIT宮川先生の基調講演。宮川先生は、文化特に東西の文化の差をいかにしてビジュアライズするか(見える形にするか)を研究しておられる。すでに米国滞在歴は20年以上。見た目は日本人であるが、考え方などはすっかり米国人である。



これはインドネシアを中心に東南アジアで盛んな伝統芸能であるワヤンと呼ばれる影絵芝居に関する研究発表。ワヤンはストーリーとしてはインドの古代叙事詩マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」などが主たる演目となっている。人形の髪型、耳飾りなどの細部の違いが人形が演じる役の性格、行動などと密接に結びついており、それをコンピュータで分析しようとしている。



これは韓国の伝統舞踊に関する研究発表。バーチャルリアリティ技術を使い没入的な環境の中で練習した方が舞踊を習得するのが早くなるという研究結果が出ている。



これはオランダのProf. Matthias Rauterbergの発表。彼とは10年以上の付き合いであるが、お互いに文化の東西の相違、特に哲学的観点からの相違に興味を持っており、良き議論相手でもある。今回は西洋の文学、哲学では「愛」「権力」「死」が中心的な話題として取り上げられて来たことを示すと共に、この点における西洋と東洋の違いを論じた。