2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

シンガポール通信ージャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」6

「銃・病原菌・鉄」の中で著者は、地理的な結びつきの強さが技術の進歩に寄与して来たと主張している。具体的に言うと、緯度的にほぼ同じであり、東西に広く広がりのある地域が存在し、そこが食料生産に適した植物が存在しており、また飼育に適した動物が存…

シンガポール通信ージャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」5

ところがヨーロパ対中国の関係に対しても同じ論理で説明しようとするため、著者が大変苦労しているという印象を与える。本書にも書いてあるが、中世においては中国は技術の分野で世界をリードしていた。中国で発明された技術は、鋳鉄、羅針盤、火薬、製紙技…

シンガポール通信ージャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」4

さてここまでの説明は、それなりに説得力があると考えて良いだろう。それと同時にこの本を読んでいて感じたのは、和辻哲郎の「風土」とこの本の内容の類似性である。和辻哲郎の「風土」では、世界の風土をモンスーン(主としてアジア)、砂漠(主として西南…

シンガポール通信—ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」3

「銃・病原菌・鉄」に書かれている事をまとめてみると以下のようになるだろう。氷河期が終わった1万3000年前頃から全世界に移住していた人類の祖先は、それぞれの地で独自の進化を始めた。当初は狩猟生活を送っていたが、徐々に食物として使える植物を…

シンガポール通信ージャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」2

さてそれではまず、「銃・病原菌・鉄」に書いてある事をまとめてみよう。この本は、約1万3000年前に最新の氷河期が終わって以降の人間の歴史を、俯瞰した立場から記述したものだと理解する事が出来る。現在の世界では西欧および米国の技術・文化が普及…

シンガポール通信ージャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」1

本書は、1997年に米国の生物学者ジャレド・ダイヤモンドによって書かれた本である。日本では、2000年に訳書がハードカバー本として出版された。その時も買い求めて読んだが、今回文庫本として再出版されたので、再び読んでみる事とした。私自身は、…

シンガポール通信ー香港再訪

6月に引き続き、週末を利用して香港を訪問した。今回も、土佐さんの作品が展示されているギャラリーを訪問して様子を見る事が1つの目的であるが、もう1つの目的は香港市立大学のSchool of Creative Mediaを訪問し、学部長のJeffrey Showと研究協力に関し…

シンガポール通信ー京都文化博物館「平清盛展」

先週帰国していた際に、京都文化博物館で開催されていた「平清盛展」を見学した。NHKの大河ドラマ「平清盛」が、低視聴率で苦しんでいるとの事である。ドラマを一度も見た事がないので、ドラマの出来についてはなんともいえないが、取りあげた相手が悪かった…

シンガポール通信ー中部国際空港「セントレア」

今回の帰国にあたっては、中部国際空港、通称セントレアを利用した。通常は関西国際空港を利用しているが、関空・シンガポール間の直行便は現在シンガポール航空が1日1便(日によっては2便)運行しているだけなので、便によっては満席に近かったり席が取…

シンガポール通信ー祇園祭

祇園祭の中心行事である鉾巡行(17日)が近づいた。京都っ子は、海外に住んでいようと祇園祭には何を差し置いても京都に戻るものだと聞いた。私は京都生まれではないが、京都に住所を移して10年以上になるし、昨年から山鉾の1つである白楽天山が立つす…

シンガポール通信ー岩波文庫「マゼラン最初の世界一周航海」2

世界一周をめざしたマゼランの船団が、現在のマゼラン海峡を通過して太平洋に乗り出してから、東南アジアの島々に達するまでの航海に関する記録が少ない事を前回指摘した。110日を要した大航海であり、しかも食料や水の不足に悩まされ、壊血病で死ぬ乗組…

シンガポール通信ー岩波文庫「マゼラン最初の世界一周航海」

この本は、1519年9月にスペインを出発し初めて西回りで世界を一周し1522年9月に同じくスペインに帰着した、マゼランの船団による世界一周航海の記録である。出発した時には5隻で約250人からなる大船団であったが、無事スペインに帰着できたの…

シンガポール通信ーグローバル社会シンガポールの構造2

前回少し書き残した事があるので、今回もダイヤモンド社の書籍オンラインに「グローバル社会シンガポールから見る未来予想図」というタイトルで、シンガポールで会計士として活躍しておられる杉山嘉信氏が書かれた記事を紹介しつつ私の意見・感想を書いてみ…

シンガポール通信ーグローバル社会シンガポールの構造

友人から面白いオンライン記事を紹介された。ダイヤモンド社の書籍オンラインで、タイトルは「グローバル社会シンガポールから見る未来予想図」というもので、筆者はシンガポールで会計士として活躍しておられる杉山嘉信という方である。大変面白く同時に刺…

シンガポール通信ーヴェーゲナー「大陸と海洋の起源」2

ヴェーゲナー「大陸と海洋の起源」の第2章では、これまでの大陸と海洋の関係に関する説が紹介された後、大陸移動説の概要の説明が行われる。そして第3章以降ではその裏付けとなる理論、事実が述べられる。まず第3章では、天文学的経度測定による大陸移動…

シンガポール通信ーヴェーゲナー「大陸と海洋の起源」

久しぶりにゆっくりと週末を過ごせたので、これも久しぶりに読書に勤しんだ。週末に読破したのはヴェーゲナーの「大陸と海洋の起源」である。ヴェーゲナー(1880年—1930年)はドイツ人で、かの有名な「大陸移動説」の提唱者である。そしてこの「大陸…