シンガポール通信ーシンガポールのファッションと四季

現在日本に帰国中である。今年の日本はなかなか秋の訪れが遅いようで、未だに日中は汗ばむ陽気である。朝夕も上着を必要としない気候である。とはいいながら、徐々に秋が深まっているようではある。

それは街を行き交う人のファッションを見るとわかる。まだ気温が高いとはいえ、人々のファッションが秋物に移りつつある。これは、実際の気候の変化に応じると共に、月日の移り変わりに応じて、人々が着るものを変えるのである。つまり10月になったから秋物に変えようかという感覚を、人々が持っているのではないだろうか。

このあたりが、日本人の四季感覚の鋭いところではないだろうか。 そしてまた季節の変化に応じて着るものを変えることそのことが、人々のファッションに対する感覚を養っているようでもある。つまり季節の変化があることが、豊かなファッション感覚と強い関係を持っているのではないだろうか。

このことは、シンガポールの人々のファッションを見るとわかる。シンガポールでは四季の変化が少ない。1年中日本で言う盛夏に相当するような天候である。従って人々のファッションもそれに応じて単純になりやすい。

いってしまえば、Tシャツに短パンで1年中暮らせるのである。NUSの学生の服装を見ていると、大半の学生が1年中Tシャツと短パンもしくはジーパンである。特に女子学生の多くは短パンとTシャツという格好である。

日本の若い女性の間にも短パンは結構な流行のようである。日本女性の足が美しくなったせいもあって、日本の若い女性の短パンスタイルは、若者が持っている健康美とある種の色気とを感じさせ、どうしても目で追いかけたくなることが多い。なぜ色気を感じるかは難しい問題であるが、本人が自分のファッションを意識しているか、異性にアピールしたいと意識的にせよ無意識的にせよ思っているからであろう。

しかしながら正直に言うとNUSの女子学生に対して色気というものを感じることはほとんどない。短パンからすらりと伸びた足そのものは健康的である。しかしながらなぜか色気を感じないのである。これはなぜだろうかと考えたところ、日本の場合と逆であって、女子学生に自分のファッションに対する意識とか、異性に対するアピールの意識を持っていないからであろう。つまり色気を感じさせるためには本人が色気をアピールするという意識を持っていることが必要なのであろう。

もう1つNUSの女子学生を見ていて気になるのは、足先を外股にして歩いている学生が多いことである。外股で歩かれると短パンスタイルでも色気を感じないものである。外股で歩くことを気にしないこと自身が「ファッションを意識していない」ということではないだろうか。

帰国してから日本女性の歩き方を見ていると、大半の女性がつま先を平行にした歩き方(直股とでもいおうか)もしくは内股の歩き方をしている。少し注意してみていると、直股7、内股2、外股1程度の割合のようである。特に内股と言うのはかなり意識していないと身に付けるのは難しいだろうから、それだけに本女性は歩き方自体にもファッションの一部として気を配っていると考えて良いだろう。

シンガポールの女性のファッションに対する無感覚は、私が観察しているのがNUSの学生だからという言い方ができるかもしれない。しかしながら、シンガポールの中心街に出かけてみると、一方ではTシャツに短パンというファッションを見かけるのと、他方では全身ブランド物に包んでいるという、逆の意味で極端なファッションを見かける。なんだか極端なのである。

日本のように、全体としてカジュアルな外見の中に随所におしゃれな部分で自己主張しているという、しゃれたファッションを見かけることは少ない。言い換えると日本女性のファッション感覚は極めて優れたものということができるだろう。