2015-01-01から1年間の記事一覧

シンガポール通信-日本の覇権主義2

領土拡大を目指すことも含めての日本の覇権主義といえば、19世紀末から20世紀半ばまでの日清戦争・日露戦争・第一次世界大戦・第二次世界大戦において、日本が海外において領土拡大を求めて繰り広げた戦争がまず頭に浮かぶ。つまり20世紀前半は日本の…

シンガポール通信-日本の覇権主義

スペイン・ポルトガルに代表される欧州の各国が15世紀に始まる大航海時代の幕開けとともに、アメリカ大陸に、東南アジアに、アフリカに進出し、これらの国々を植民地化し、いわゆる西洋優位の世界を築いてきたことはよく知られている。このブログでもその…

シンガポール通信-「一億総活躍社会」と「一億総白痴化」

安倍政権が第3次安倍改造内閣の目玉として、「一億総活躍社会」というのを掲げている。なんとなく胡散臭いと感じられる標語であるし、そのように感じている人も多いだろう。もっとも一億総活躍ということは、日本人全員が生き生きと毎日を生活できる社会と…

シンガポール通信-高階秀爾「日本人にとって美しさとは何か」4

高階秀爾「日本人にとって美しさとは何か」に書かれている日本絵画の特徴は、主として3点あることを説明した。それ以外にも幾つか細かな特徴があるので、最後にそれらに関して考えてみたい。ひとつは、日本絵画においては文字と絵が混在していることが多い…

シンガポール通信-高階秀爾「日本人にとって美しさとは何か」3

さて高階秀爾「日本人にとって美しさとは何か」に記されている日本美術の特徴のもう一つは次のものである。「西洋絵画がフレームの中で完結した世界を描こうとするのに対して、日本の絵画は世界の一部を描くという描き方をし、フレーム外の世界の存在を示唆…

シンガポール通信-高階秀爾「日本人にとって美しさとは何か」2

高階秀爾の「日本人にとって美しさとは何か」では、絵画を中心として日本の美術と西洋の美術を比較することによって、日本人の美意識を欧米人の美意識と比較しようとしている。著者によれば、日本の絵画と西洋の絵画では以下のような違いがあるという。1. …

シンガポール通信-高階秀爾「日本人にとって美しさとは何か」

鈴木大拙の「東洋的な見方」を通して、西洋一元論に基づく西洋的な見方と東洋二元論の基づく東洋的な見方について考えた。鈴木大拙が禅に造詣が深いこともあって、この著書において東洋的な見方とは多くの場合禅的な見方をさしている。禅においては「不立文…

シンガポール通信-鈴木大拙「東洋的な見方」3

鈴木大拙のこの著書は、東洋一元論に基づく「東洋的な見方」というものを西洋二元論に基づく西洋的な見方と対比させて論じようとしたものだと理解できる。この著書は、鈴木大拙が晩年に書いたエッセイからタイトルの通り東洋的な見方に関わる14編を選んで…

シンガポール通信-鈴木大拙「東洋的な見方」2

鈴木大拙の優れた点は、アメリカ・ヨーロッパにおける通算すると20年以上の滞在経験を基に、東洋と西洋の考え方・見方さらには哲学を共に良く知った上で、西洋に対しては東洋的な考え方・見方の優れた点を、また東洋に対しては西洋の優れた点を紹介しよう…

シンガポール通信-鈴木大拙「東洋的な見方」

東洋一元論対西洋二元論もしくは日本やそれを含んだアジアと西洋の関係を考えるとき鈴木大拙を外して考えることはできない。鈴木大拙は1870年に生まれ1966年に没している。禅思想を中心として老荘思想などにも詳しく、これらに基づき日本的な考え方…

シンガポール通信-東洋一元論と日本の革新的技術

東洋一元論を論じてきて、それが日本人(もしくは日本人を含めたアジア人)の「効率の良さ・便利さ」を嫌い「すがすがしさ・心地の良さ」を好む基本的な性向を決める原因となったのではないかということを論じた。一見「効率の良さ・便利さ」と「すがすがし…

シンガポール通信-東洋一元論とクールジャパン

前回、日本人は合理主義に基づく「便利さ・効率の良さ」よりも「心地よさ・すがすがしさ」のような精神的なものに心を惹かれるのではないかということを述べた。「心地よさ・すがすがしさ」に惹かれるのを東洋の哲学の原点である東洋一元論と直接繋ごうとい…

シンガポール通信-東洋一元論・西洋二元論と科学技術の発展2

昨日国際会議の後でフランスからの女性参加者と話をしていて、イスラム過激派によるテロの話になった。その際私は、イスラム教における政教一致の基本原理とキリスト教における政教分離の基本原理の違いが、中東と欧州の思想・科学技術の決定的な差を生み出…

シンガポール通信-東洋一元論・西洋二元論と科学技術の発展

よく言われることであろうが、西洋二元論が西洋の科学技術の発展を促したという議論がある。二元論の基本的な考え方は、すべての物事を二つに分けていくことによって種々の要素に分解しそれらのシンプルな要素の集合体として全体の機能を理解しようとする態…

シンガポール通信-イスラム過激派のテロ、中国の覇権主義の根底にある東洋一元論と西洋二元論

現在話題になっているイスラム過激派によるパリのテロ事件、そして中国の覇権主義の大本の原因を考えていると、どうもそこには東洋一元論と西洋二元論の違いがあるような気がしてならない。マスコミ等ではごく最近の情勢のみからこれらの事件を理解しようと…

シンガポール通信-領土拡大政策と宗教2

さて前回中国が本気で覇権主義や領土拡大主義を政策としているわけではないと考えられるということを述べた。さらに領土拡大主義と宗教との関係に触れ、過去の歴史を見るとキリスト教やイスラム教が領土拡大主義と結びついてきたことを述べた。イスラム教や…

シンガポール通信-第3回京大おもろトーク

先週11月25日にシンポジウム「第3回京大おもろトーク:アートな京大をめざして」を開催し、私がその司会を担当した。前回のシンポジウムの様子もこのブログで紹介したが、このシンポジウムは京大にアートを取り入れようとする動きの一環である。ここで…

シンガポール通信-領土拡大政策と宗教

さて現在の中国に対する外交政策の取り方を考える際に、これまで述べてきた中国の歴史を知ることは大きなヒントになる。これまで述べてきたように中国はそれだけでも広大な領土を抱える大国であり、まだ不安定な国内の情勢を安定化することが最重要課題であ…

シンガポール通信-中国の覇権主義を考える3

中国の明の初期に、当時の皇帝永楽帝が宦官鄭和に命じて行わせた「鄭和の南海大遠征」は、欧州で「大航海時代」が始まるのに半世紀もしくはそれ以上先行していた。それとともに、そこで用いられた船の大きさ、船団の巨大さ、さらには航海技術などは、当時の…

シンガポール通信-中国の覇権主義を考える2

「鄭和の南海大遠征」とは、明の初期永楽帝の時代に1405年から1431年まで朝貢貿易を勧めるため宦官鄭和に命じて7回にわたって大艦隊を海外に送ったことをさしている。欧州における大航海時代の始まりに数十年先行し、かつその具体的な成果であるコ…

シンガポール通信-中国の覇権主義を考える

さて、21世紀を混迷の時代とする可能性のあるもう一つの原因である中国の覇権主義について考えてみよう。最近中国の覇権主義が話題になっている。覇権主義とは、自国の強大な力を背景として近隣諸国へ圧力をかけたり領土を拡大しようとする野望を推進する…

シンガポール通信-21世紀は混迷の世紀か?:2

さて21世紀は混迷の時代であるとしたとき、その一つがイスラム原理主義の台頭であることは間違いない。この問題の厄介な点は、このブログでも何度も論じたがイスラム原理主義がムハンマドによって作り出されたイスラム教の原点に戻ろうという、原点回帰の…

シンガポール通信-21世紀は混迷の世紀か?

21世紀はアジアの時代であるといわれることがある。これは中国をはじめインドなどアジアの諸国が急速な経済発展を遂げていることから、21世紀はアジアの国々が欧米の国々と経済面や政治面で対等にわたりあえるか、もしくはそれを凌駕する時代になるであ…

シンガポール通信-イスラム過激派のテロにどう対応するか3

さてそれでは、世界がイスラム国に代表されるイスラム過激派に向けたメッセージは、どのようなものとなるべきだろうか。私の考えた案を以下に示そう。「我々は今回のフランスにおけるテロに代表されるテロを、イスラム過激派が世界に対して仕掛けている戦争…

シンガポール通信-イスラム過激派のテロにどう対応するか2

前回、テロを受けたフランスも含め欧米社会はイスラム過激派の主義主張に反駁する自分たちの主義主張を明確にし、それをイスラム過激派に対して明確に宣言すべきであると書いた。それではその主義主張とはどのようなものであるべきだろうか。 それは一言で言…

シンガポール通信-イスラム過激派のテロにどう対応するか

さてそれでは、イスラム国やイスラム原理主義者(ここではこれらをまとめてイスラム過激派と呼んでおこう)のテロにどう対応すればいいのかということを考えてみよう。今回のパリのテロに対するオバマ大統領など主要国首脳のコメントは、いずれも「テロは許…

シンガポール通信-パリの同時テロはイスラム原理主義者による欧米への戦争である2

13日のパリ市内のテロ事件からまだ数日しか経っていないというのに、国内のテレビはもうほとんどテロに関するニュースは報じていなくて、いつものバラエティ中心の番組になっている。あたかも、この世界規模で報じられているニュースがなかったかのような…

シンガポール通信-パリの同時テロはイスラム原理主義者による欧米への戦争である3

イスラム国を中心としたイスラム過激派もしくはイスラム原理主義者から見ると、欧米社会もしくはキリスト教社会はどのように見えるのだろうか。ここに彼らが欧米に対して無差別なテロを仕掛ける原因があると言える。まず第一に言えるのは、欧米社会が本来の…

シンガポール通信-パリの同時テロはイスラム原理主義者による欧米への戦争である

13日にパリ市内の3カ所で起きたテロ事件により、現時点で130名近い方々がなくなったとのニュースが報道されている。痛ましい限りであり犠牲になった方々のご冥福をお祈りする。テロ事件はバタクラン劇場、パリ市内のレストラン、スタッド・ド・フラン…

シンガポール通信-ハイアットリジェンシー京都ホテルにおけるプロジェクションマッピング

10月23日にハイアットリジェンシー京都ホテルにおいて、土佐のアート作品を用いたプロジェクションマッピングとディナーを組み合わせたディナーショーを行った。そもそもの発端は、3月に京都国立博物館で行った土佐のアート作品を用いたプロジェクショ…