シンガポール通信ーシンガポールの12月

シンガポールは11月後半から雨期に入る。雨期といっても私がシンガポールに来た4年前までは、少し雨降る日が多いかなといった程度であり、しかも雨と言ってもいわゆるスコールで、しばらく激しく降るとさっとやんでしまい、青空が広がるといういわば男性的な雨期であった。

ところが昨年あたりから雨期の様子が変わって来た。午前中は晴れていてもお昼過ぎから曇り始め、2時から3時頃に激しく降る。このあたりはいわゆるスコールなのであるが、以前と違っているのはそのうちにやむだろうという期待を裏切るのである。確かに激しく降るのは短時間であるが、その後も小雨とはいえずっと夜になるまで降り続ける。

小雨がずっと降り続ける様子はちょうど日本の梅雨に近い。どんよりと曇った空から小雨が降り続けるとなんだか憂鬱な気持ちになってしまう。このような天気はシンガポールには見られなかったものである。

いわゆる世界的な天候不順の一環かもしれない。このような天候不順が続くと、日本ならば人々が集まるとすぐ天候の話題になり、その原因などをああでもないこうでもないと皆で議論し合うものである。

ところがシンガポールでは不思議なほど毎日の天気や天候の話が話題にならない。天候に関しては極めて敏感な日本人の私としては、シンガポールに来た当初、人々が天候のことを日々の話題にしないのが不思議であった。そのうちにわかって来たのは、毎日が同じような天気であるため、天候を話題にすること事体が難しいからではないかということである。

悪く言うとシンガポールの人たちは、毎日が同じような天気で、かつ四季の変化がないため、天候、四季の変化に対する感受性のようなものを失ってしまっているようなのである。といことは、このような天候不順が続くということが、シンガポールの人たちが天候に対する感受性を取り戻すのに役立つ可能性があるのかもしれない。

12月に入ると、シンガポールでは人々が2週間程度の休暇を取り始める。クリスマスの準備も日本より早いようである。12月に入ると休暇を取り海外などに出かけ、クリスマスには帰国して家でクリスマスを祝うというのがシンガポールの人たちの12月の過ごし方のようである。日本ではクリスマスが終わってから、正月休みに入るのが通常であろうから、日本よりは3週間ほど休暇の期間が前にずれている訳である。

シンガポールではクリスマスが終わると、人々の生活は通常モードに戻る。もちろん1月1日は休日であるが、これは単なる休日であって、人々は特別に正月を祝ったりはしない。アジアの国なのに正月を祝わないというのは不思議な気がするが、こちらでは正月はいわゆる旧正月を意味しており、1月末もしくは2月の旧正月は盛大なお祝いをする。

12月に冬期休暇をとる習慣は欧米の習慣と近いが、旧正月を祝うという習慣は日本でもほぼ廃れてしまっている習慣であるから、シンガポールでは欧米の習慣とアジアの伝統的な習慣の混在した状態になっているといっても良いだろう。

シンガポールに住んでいると日本の習慣を忘れてしまうかというとそんなことはない。正月が近づくとやはり徐々に気分が昂揚してくるというのは現在でも変わらない。もっとも年賀状を出す習慣は5年ほど前にやめてしまったので、年賀状を書かなければというプレッシャーに悩まされることはなくなった。



チャンギ空港のクリスマスのデコレーション