2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

シンガポール通信ーニコラス・ウェイド「5万年前」を読む:人々はなぜつながる事を望むのか2

私が指導している博士課程の学生の生活を見ていると、最近の若者の典型的なコミュニケーション行為を知る事が出来る。彼等の多くは東南アジアの出身である。シンガポールの若者は、苦労して博士課程を出て学位を取り大学での研究者や教育者として生きて行く…

シンガポール通信ーニコラス・ウェイド「5万年前」を読む:なぜ人々はつながる事を望むのか

先週末の週末を利用してニコラス・ウェイド著「5万年前」(イースト・プレス)を読みはじめた。以前にもざっと読んだ事はあるのだけれども、今回はもう少しまじめに読んでいる。現在、これまでこのブログにかいた事などをベースとして、メディアの歴史で起…

シンガポール通信ー旧友との再会

今週は、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)時代の同僚で現在は大学の先生をしている3人の方がシンガポールに来られて滞在中なので、毎日のように夜は一緒に食事をしてかつ飲んで過ごしている。小野哲雄(北海道大学教授)、今井倫太(慶応義塾教授)、竹内…

シンガポール通信ーチャイナタウン探訪

慶応メディアデザイン研究科の奥出先生がこられたので、CUTE Centerの勝本さんも含めて久しぶりにチャイナタウンに食事に出かけた。もう旧正月(Chinese New Year)が終わってからだいぶ経つが、まだチャイナタウンは旧正月の余韻が残っており、大勢の人でに…

シンガポール通信ーskypeの普及はテレビ電話が普及する事を意味しているのか?(2)

もしskypeに代表されるビデオ通話が人々の日常の会話に使われるという形で普及して行くなら、それはついにビデオ通話(テレビ電話)が普及するという事を意味している。ビデオ通話というコンセプトが形作られその初期の形態がNTTなどの通信キャリアの研究所…

シンガポール通信ーskypeの普及はテレビ電話が普及する事を意味しているのか?

以前にオーム社から出版した私の著書「テクノロジーが変えるコミュニケーションの未来」を、Springerから出版するために現在英語に翻訳している。(ベストセラーだと出版社で翻訳してくれるのだけれども、残念ながらベストセラーにはならなかったため、自分…

シンガポール通信ー村上春樹とコミュニケーションメディア

もう一つ最後に書いておきたいのは、村上春樹と電話・インターネット・ソーシャルネットワークなどのいわゆるコミュニケーションメディアの関係である。私が彼の作品を読んでいて感じるのは、彼の作品ではこれらのメディアはあまり主要な役割をしていないよ…

シンガポール通信ー村上春樹を一応読了3

さてそれでは村上春樹と彼の小説はノーベル賞候補としてふさわしいのだろうか。私自身は先に述べたように、彼の作品が持つ文学作品としての深さとそして同時に娯楽性がうまくバランスしている所は高く評価したい。そしてまた彼が描く主題である、表の世界と…

シンガポール通信ー村上春樹を一応読了2

そして主人公は、与えられた困難な問題を解決する過程で、周りの登場人物のサポートや多くの幸運に助けられて、徐々に成長して行く。また時には現実世界と異次元の世界を自由に行き来するなどの特殊能力を身につけて行く。そして最後には困難を解決するので…

シンガポール通信ー村上春樹を一応読了

ここ一ヶ月ほど村上春樹の小説を重点的に読んでいたが、主な著作は読み終えたかなという感覚である。とりあえずこれまで読んだ本を列挙しておこう。(カッコ内は発表もしくは出版年。) 長編小説 風の歌を聴け(1979年) 羊をめぐる冒険(1982年) …

シンガポール通信ー村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」:表の世界と裏の世界—無意識の世界と満州2

そして間宮中尉は、時期を見計らってソ連人将校を殺そうとするのであるが失敗する。そのソ連人将校は、自分に復讐しようとする間宮中尉をあざわらい、自分の拳銃を渡してこれで自分を射ってみろと言う。しかし動揺している間宮中尉は狙いを外してしまい、ソ…

シンガポール通信ー村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」:表の世界と裏の世界—無意識の世界と満州

表の世界と裏の世界が存在するそして時には表の世界と裏の世界の物語が同時進行するというのが村上ワールドのもう一つの特徴であろう。そして前回述べたように、裏の世界は必ずしも一つではなくて複数の裏の世界が構築されていることもある。それが村上ワー…

シンガポール通信ー村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」:「岡田クミコ」と「綿谷ノボル」2

岡田クミコは、別の長編小説「1Q84」のどの登場人物に対応するだろうか。主人公「天吾」の恋人でありもう一人の主人公である「青豆」だろうか。そうではなくてむしろ私は、宗教法人「さきがけ」の教祖の娘であり、小説「空気さなぎ」を書き「天吾」にそ…

シンガポール通信ー村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」:「岡田クミコ」と「綿谷ノボル」

「岡田トオル」の妻「岡田クミコ」がこの小説の中では副主人公的な位置付けにあるが、その割にはキャラクタが弱い事を前回指摘した。この小説の後半に入ると、岡田トオルが、クミコの兄である「綿谷ノボル」の手先として働いている「牛河」の手引きによって…

シンガポール通信ー村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」:副主人公?「岡田クミコ」

さてそれでは「ねじまき鳥クロニクル」の副主人公は誰だろうか。これはなかなか難しい問題である。一つの考え方は主人公「岡田トオル」の妻「岡田クミコ」が副主人公だとする案である。岡田クミコが副主人公であるかどうか、ストーリーを追いながら考えてみ…

シンガポール通信ー村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」:主人公「岡田トオル」

「ねじまき鳥クロニクル」は、村上春樹の他の長編小説「世界のおわりとハードボイルドワンダーランド」「海辺のカフカ」「1Q84」などと並んで村上ワールドを構成している長編小説であるが、これらの間には登場人物やそれらの関係またストーリー構成など…

シンガポール通信ー村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」:まえおき

村上春樹の小説をもう少し読みたいので、先週末はシンガポールの紀伊国屋に出かけた。通常は日本に帰国した際に本を買い込んでシンガポールで週末に読むという生活をしているが、手元の本もほぼ読んでしまったし次の帰国は3月下旬の予定なので、シンガポー…

シンガポール通信ー上田滋夢さん来所

先週金曜の午後に、上田滋夢さんが来所された。上田滋夢といえば、熱心なサッカーファンはご存知だろう。京都出身の元プロサッカー選手で大学在学中に渡英し、イングランド2部、イングランド3部、スコットランド1部で3季プロ選手としてプレーし、198…