2016-01-01から1年間の記事一覧

シンガポール通信-ポケモンGO狂想曲:2

前回は現在大きな話題になっている「ポケモンGO」の基本コンセプトが、ゲームとしては敵キャラと闘ったりアイテムをゲットするという、ゲームの本流ともいうべきシンプルなものであることを述べた。そしてその大きな特徴が、ゲーム機やスマホなどの中のゲー…

シンガポール通信-バングラデシュのテロ事件

ついに恐れていたことが起こったというべきか。ある意味で日本人を対象としたともいえるテロ事件がバングラデシュで起こった。バングラデシュの首都ダッカで、7月1日夜高級飲食店に武装グループが押し入って、客などを人質にして立てこもった。立てこもり…

シンガポール通信-アリス・ロバーツ「人類20万年 遥かなる旅路」:7

さてこの著書の感想の最後として、現生人類とネアンデルタール人の関係に関して考えてみよう。現生人類がアフリカを出たのは約8万年前と言われているが、実はそれよりずっと前に現生人類の祖先はアフリカを出てヨーロッパやアジアに拡散している。グルジア…

シンガポール通信-アリス・ロバーツ「人類20万年 遥かなる旅路」:6

アリス・ロバーツのこの著書に関して何度も書いてきたが、それはやはりこの本が読者を引き込むだけの魅力を持っているからだと思う。そしてその魅力がどこから来るかというと、最初に書いたように、この著書が現生人類がアフリカを出て地球全体に拡散してい…

シンガポール通信-アリス・ロバーツ「人類20万年 遥かなる旅路」:5

さてそれでは、現生人類が現在のベーリング海峡を越えてアメリカ大陸に移住したのはいつ頃だろうか。シベリア北部のヤナ川流域にはヤナ遺跡があり、そこでは約3万年前に現生人類が住んでいた証拠がある。一方で北アメリカの各地ではクローヴィス文化と呼ば…

シンガポール通信-アリス・ロバーツ「人類20万年 遥かなる旅路」:4

さて、約8万2000年前〜7万8000年前の間にアフリカを出た現生人類は、その後どのようにして世界に拡散して行ったのだろうか。アジアの方へ移動して行った一派の足跡を追ってみよう。現生人類の祖先がアフリカを出たのは、一時的な地球の寒冷化と乾…

シンガポール通信-アリス・ロバーツ「人類20万年 遥かなる旅路」:3

約20万年前に現在の形に進化した現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)は、その後数万年間はアフリカにとどまった。これはちょうど、地球が19万年前〜13万年前までOIS6と呼ばれる氷期にあったからだと考えられる。氷河が北のほうから押し寄せアフ…

シンガポール通信-アリス・ロバーツ「人類20万年 遥かなる旅路」:2

前回も書いたように現在の人類いわゆる現生人類は、ネアンデルタール人の祖先と約50万年前に分岐し、約20万年前に現在の私たちの形態に進化したと考えられている。アリス・ロバーツのこの著書は、20万年前に生まれたとされる現生人類がその後約7万年…

シンガポール通信-アリス・ロバーツ「人類20万年 遥かなる旅路」

さて助成金の申請書提出が済んで一段落したところなので(といっても7月に入ると次の大きな助成金の申請書の作成を行う必要があるのだけれども)、しばらく中断していた読書を再開することにした。まず最初にとりあげるのは、アリス・ロバーツ「人類20万年…

シンガポール通信-舛添氏の辞職に思う

舛添氏が東京都知事の職をついに6月15日に辞職することとなった。東京都民を含め本来都知事を護るべき立場にいる自民党・公明党の与党からも、「もっと早く辞めるべきだった」という声が上がるほどなので、遅きに失したということだろう。とはいいながら…

シンガポール通信-ブログ再開

5月は全くブログ更新を行わず、気がつくと6月も後半である。5月から6月上旬にかけては、国の助成金取得に向けた研究計画書の作成を行っており、全く土日もない1ヶ月半であった。研究計画書の作成になぜそれだけの時間がかかったのかというのは、内容の…

シンガポール通信-ウィリアム・H・マクニール、ジョン・R・マクニール「世界史」:2

ウィリアム・H・マクニールとジョン・R・マクニールは、親子でともに歴史学者である。ウィリアム・H・マクニールは1917年生まれでシカゴ大学名誉教授。このブログでも紹介した、「戦争の世界史」などの著書の著者としてよく知られている。1917年生ま…

シンガポール通信-ウィリアム・H・マクニール、ジョン・R・マクニール「世界史」

以前にこのブログで、ウィリアム・H・マクニール著の「戦争の世界史」を紹介した。それまでの世界史に関する書物の大半は、世界史とは言いながらヨーロッパ・中国・アメリカなどの特定の国もしくは地域の歴史の記述が基本となっており、その意味では複数の地…

シンガポール通信-日産の自動運転機能は本当に便利だろうか?

自動運転をめざした技術開発をグーグルや世界の車メーカーが競って行っている。すでに、前方に障害物があることを検出した場合に自動的にブレーキをかける衝突防止機能は多くの車に取り入れられており、実用化段階に入っているといえよう。また渋滞時などに…

シンガポール通信-シャープが携帯ロボット発売:シャープよお前もか!

シャープがロボット型の携帯電話RoboHoN(ロボホン)を5月26日に発売すると発表した。価格は19万8000円で、このブログでも取り上げたソフトバンクのペッパーとほぼ同じ価格である。開発は、ロボットクリエーターとしてよく知られている高橋智隆氏と…

シンガポール通信-男子バトミントン桃田選手の勘違い:2

前回はロジェ・カイヨワによる遊びの分類を示した。そしてスポーツは、「体力もしくは知力によって勝ち負けを決める遊び」であり、これはカイヨワの分類学では「アゴーン」と呼ばれることを述べた。これに対し、ギャンブルは「運で勝ち負けを決める遊び」で…

シンガポール通信-男子バトミントン桃田選手の勘違い

男子バトミントンの日本の新旧のエースである桃田賢斗選手と田児賢一選手が、違法な裏カジノ店に常習的に出入りしていたことが判明して大きな話題になっている。特に桃田選手は世界ランキング2位まで登詰めたこともあり、今年のリオデジャネイロオリンピッ…

シンガポール通信-ペッパーはソフトバンクの事業として成り立つか2

ペッパーに関する記事を読んでいると、いくつかの疑問を感じる。その最も大きなものは前回も書いたように、果たしてコミュニケーションロボットとしてこれまで発表されたロボットとペッパーは何が違うのかということである。第二次ロボットブームではかなり…

シンガポール通信-ペッパーはソフトバンクの事業として成り立つか

ソフトバンクが人型ロボットが産業として成り立つと判断しているのではないかということを前回述べた。それは、ソフトバンクがペッパーと呼んでいるロボットの製造・販売を行っている手法が、まさにロボット事業を自社のビジネスの一つとして推進しようとし…

シンガポール通信-日本のロボット研究開発の行方2

前回は2000年〜2005年頃の第二次ロボットブームに関して論じたが、それでは現在はどうだろう。現在は第三次ロボットブームといわれている。しかしどうも日本の現状を見る限りでは、第二次ロボットブームのような華やかさに欠けるのではないだろうか…

シンガポール通信-日本のロボット研究開発の行方

さてそれでは日本のロボットの研究開発の状況はどうだろうか。日本は産業ロボットに関しては先進国であり、成熟した産業・市場が存在している。それに対してここで論じるロボットはどう呼べばいいのだろうか。人型ロボット・動物型ロボット・癒しロボット・…

シンガポール通信-グーグルのロボット研究開発のゆくえ

グーグルがロボット事業の売却を検討しているというニュースが入ってきた。グーグルがロボット事業に参入したのは2013年の暮で、二足歩行・四足歩行ロボットの開発で有名なボストン・ダイナミクスや東大初のロボットベンチャーなど10社近くを買収する…

シンガポール通信-アルファ碁が韓国の最強棋士に勝利4:西洋優位の世界はいつまでつづくか

さて最後に触れておきたいのは、今回のアルファ碁を開発したのがグーグルの子会社であったということである。将棋のソフトでは日本勢ががんばったので、日本の人工知能研究もなかなかのものだと考えていたが、囲碁ソフトでは結局グーグルという米国の巨大企…

シンガポール通信-アルファ碁が韓国の最強棋士に勝利3:シンギュラリティは来るか?

前回グーグルが開発した人工知能囲碁ソフト「アルファ碁」が意外な弱点を持っていることを述べた。その弱点とは、まともな手への対応は極めて優れているが、新規な手や奇手に対する対応がうまくできないということである。これはアルファ碁はもとよりそこで…

シンガポール通信-アルファ碁が韓国の最強棋士に勝利2:アルファ碁の弱点が見えた!

グーグルの開発した人工知能に基づいたコンピュータ囲碁ソフト「アルファ碁」が、世界でも最強に入る韓国の棋士イ・セドル九段に三連勝したことが大きなニュースになっていることを前回述べた。そしてアフファ碁の基本的なアルゴリズムとして、「ディープラ…

シンガポール通信-アルファ碁が韓国の最強棋士に勝利

グーグルが開発した人工知能にもとづく囲碁のソフト「アルファ碁」が、韓国のイ・セドル九段に全5局の最初の3局に3連勝したというニュースが飛び込んできた。イ・セドル九段は囲碁界でも世界最強棋士の一人と言われているので、人工知能の囲碁ソフトが人…

シンガポール通信-何が中国の科学技術の発展を停滞させたか?(まとめ):2

宋の時代に急速に発達した中国の商業・鉄鋼業がその後停滞し、科学技術・文化面で西洋に抜かれてしまい、現在の科学技術・文化において西洋が支配する世界が形成された理由を考えてきた。しかし栄華盛衰は世の習いである。栄華を極めた大国も永遠には続かな…

シンガポール通信-何が中国の科学技術の発展を停滞させたか?(まとめ)

さて何回かにわたって、なぜ中国では科学技術の発展がある段階で停滞したかを論じた。これは科学技術だけではなく、その周囲をとりまく商業や工業の発展が停滞したことをも意味している。これが中国人が科学技術の発達に必要な頭脳を有していないということ…

シンガポール通信-科挙制度が中国の科学技術の発展を停滞させた?

ここまで、中国が皇帝をトップとする統一国家であったことが、中国の科学技術の発展の妨げになったのではないかということを論じた。もちろん統一国家の場合でも、トップに先を見通すことのできる優れた皇帝なり国王がいる場合は、政策が効率的に実施されて…

シンガポール通信-統一国家が中国の科学技術の発展を停滞させた?:3

中国が宋の時代において鉄鋼業及び商業が大いに栄え、西洋(具体的にはイギリス)において産業革命が生じたのと似たような社会状況が生じたことを述べた。しかしながら、中国においては産業革命は生じなかった。これは、宋の時代の政府が工業や商業の発展を…