シンガポール通信ー祇園祭

先週末、祇園祭を楽しむため短期間であるが帰国した。

海外からの観光客じゃあるまいし、わざわざ祇園祭を見るために帰国するというのは酔狂かも知れないが、他にもいくつかミーティングがある事もあって帰国した訳である。


普段は閑散としている地下鉄烏丸御池の駅も今日ばかりは人の波


祇園祭は良く知られているように疫病などの災厄がおこらない事を願って平安時代に始まった祭りであり1000年以上の歴史を持っている。

京都に住んでいた学生時代の6年間は、7月中旬と言うと夏休みで帰郷の時期と重なっている事もあって、祇園祭は学生時代には見た事がなかった。そういえば大文字焼きも学生時代は見た事がない。

それらの歴史的行事に今頃になって興味がわくというのも面白いものである。学生時代は京都の歴史のある寺社仏閣を見ても、「何だ、 歴史はあるかもしれないがただの寺じゃないか」などといきがった見方をしたものであるが、最近はやっと歴史の重みなるものを感じる事が出来るようになった。

祇園祭のクライマックスは山鉾の巡行であり、それが祇園祭と思ってしまいがちであるが、実際には山鉾巡行を中心とした一ヶ月にわたる京都の年中行事である。


これは山鉾巡行の先頭の長刀鉾、常に巡行の先頭に立つ決まりになっている


これは山の一つである白楽天


最近は宵山、宵宵山なども有名になって来たが、本来は京都人たちのための地元の祭りである。観光客は京都の大切なお客さんなので、観光客に対しては京都の人たちは大変親切に対応するのだけれども、接し方を見ていると「まあ来てくれはるのは結構どすけど、これは京都の祭りどすえ」という感覚を受ける。

その意味では、祇園祭を本当に知るには京都に住みこの一ヶ月間の行事を見守る必要があるのだろう。最近、引退後はなんとか京都に住みたいものだと思うようになって来た。ただ、歴史があるだけに、なかなか京都の人たちは新参者を受け入れてくれない、言い換えれば、いつまでもお客さん扱いされるということは覚悟する必要があるだろう。

ところで今回の祇園祭では、懐かしい人に再会した。羽尻公一郎さんである。羽尻さんは人工知能の分野の研究者で私のATR時代に私の研究所でしばらく一緒に仕事した関係である。その後、彼はソニーコンピュータサイエンス研究所IBM基礎研究所と情報関係では有名どころの研究所で研究者として働いた後、30歳そこそこで立命館大学助教授に就任した。

大変頭の切れる研究者なのだが、残念なことに病気になったため大学を退職してしばらく療養に専念していた。最近体の方もすっかり回復したので、再び研究者としての活躍をめざして就職活動を開始したところとの事である。祇園祭を見た後、近くの喫茶店で数時間話したが相変わらず豊富な話題を持っており楽しく時間を過ごす事が出来た。良い就職先を見つけてもらいたいものである。


羽尻公一郎さん