シンガポール通信-QS世界大学ランキング:2

シンガポールの2大学、NUSとNTUがQS世界大学ランキングで12位、13位とトップテンを狙える位置に上昇してきていることを前回述べた。それと共に、特にNTUに関してはまだ世界の多くの有名大学と型を並べる所までは、実力的には来ていないと私が感じていることも述べた。多分QS社に多額のコンサルティング料を支払って、順位を上げるためのアドバイスなどをもらっているのであろう。

これもやりすぎると、世界の有名大学から非難を浴びQS世界大学ランキングそのものの信頼性をそこねることになるだろう。したがってNTUのランクの向上はそろそろ頭打ちになるものと思われる。来年のQS世界大学ランキングに注目したい。
さてアジアの10大学のランキングの推移の法に再び話を戻したい。前回示した10大学のランクの推移図を再び下の図1に示す。



図1.アジア主要10大学の世界大学ランキングの変動


この図を見ると2013年〜2015年までは各大学とも順位が比較的落ち着いていると書いたけれども2011年および2016年も加えると、順位が上がり気味の大学と下がり気味の大学に2分されることがわかる。順位が下がり気味の大学は、東大、京大(日本)、ソウル大(韓国)、香港大(香港)の4大学である。残念ながら日本を代表する東大と京大は順位が下がり気味の大学に分類される。これらの大学の順位の変動を示した図を図2に示す。



図2.順位が下降気味のアジアの4大学の世界大学ランキングの変動


これを見ると東大・京大および香港大が徐々に順位を下げてきていることがわかる。これはこれまで抜群であったと考えられる東大・京大の世界レベルでの知名度が、アジア系の他大学の頑張りによってその相対評価が下がってきていることを示しているのではないだろうか。

大学世界ランキングの毎年の結果に一喜一憂することはないかもしれないが、少なくともアジアの他大学がランクを上げるべく努力をしていることは知っておくべきであろう。大学世界ランキングの結果が大きく影響するのは海外からの留学生であるといわれている。アジアでは言語の壁はあるものの東大・京大をはじめとする国内大学に対する海外の学生の留学希望は近年増えてきている。

それが、アジアの他大学の評価が相対的に高くなると、ふたたび日本にくる留学生の質や数が下がってしまうという恐れがある。この点はよく考えておくべきである。

最後に、上記の4大学を除いたアジアの6大学の世界大学ランキングの順位の変動を図3に示す。



図3.順位が上昇気味のアジアの6大学の世界大学ランキングの変動


図2と対照的にいずれの大学も順位を上げてきており、元気な様子がみてとれる。特に先に述べたシンガポールのNTUと韓国のKAISTの上昇ぶりがめざましい。再び言うけれども、アジアの他の大学が順位向上をめざして頑張っていることを、東大・京大始め国内の大学は頭に入れておくことが必要である。