シンガポール通信-楽天二子玉川新社屋におけるトークショー

前回紹介した文化とコンピュータに関する国際会議Culture and Computing 2015より前になるが、10月4日に東京二子玉川の楽天の新社屋において土佐の作品の上映会とトークショーを行った。

楽天はご存知のように日本最大のオンラインショップを運営しているが、楽天とアートの関係というのはあまりピンとこないかもしれない。実は3月に京都国立博物館で土佐のアート作品をコンテンツとして用いたプロジェクションマッピングを実施した際に、資金不足を少しでも補うため最近流行のクラウドファンディングで寄付を募るということを行った。その際に楽天の方に多額の寄付をして頂き、その縁で楽天の新しい本社で土佐のアート作品を用いたアート上映会とトークショーをしてはということになった。

楽天のオンラインショップで扱っているのは本や服や日用品などが中心で、アート作品はまだ本格的には扱っていない。しかし今後は新しいお客を獲得するためにもアートを扱うというのは一つの方向だとのことである。また土佐の作品のような映像アートはディジタルコンテンツであるため、音楽などと同様にダウンロード形式で売っていくことも原理的には可能となる。

もっとも高解像度であることから数十Gの容量となるため、ダウンロードという形式が適しているかという問題はあるし、高額のアート作品をダウンロードという形で販売することにアートのコレクターが抵抗をおぼえるだろうという問題もある。とはいいながら楽天としては将来の方向としてディジタルアートを販売していくことも考えており、その手始めのトライアルとして土佐の作品の上映会とトークショーを行うと案を受け入れて頂いたのであろう。

トークショーにおける土佐以外の登壇者としては、2名の方にお願いすることとなった。一人はNHKの解説委員の中谷日出氏である。中谷さんは文化や芸術の分野を中心として解説を行ってきておられよく知られた方である。NHKの番組で土佐の作品の紹介をして頂いたこともあって、土佐の作品の解説をしながらトークショーで土佐アートの特徴などに切り込んで頂けることを期待した。

もうお一人としては、シンガポールIkkan Galleryという画廊を経営しているギャラリスト眞田一貫さんにお願いした。眞田さんは土佐の作品を扱って頂いているギャラリストであり、土佐の作品の解説を売るという立場もしくはコレクターが買うという立場からして頂くのに適していると考えた。

司会は私が務めたが、ある意味で土佐の作品を知り尽くしている2名の方と土佐によるトークは、土佐の作品を中心として色々と話が広がった。そして結局はアートとは何かそしてアート作品をコレクションするとはどういうことかという深い話となり、聴衆の方々にも十分楽しんで頂けたのではと思う。聴衆としてはもちろん多くの一般の方々に来て頂いたが、それと同時に古くからの知り合いの方々にもたくさん参加して頂き、トークショーが終わった後でも色々と楽しく話が弾んだ会であった。



二子玉川はかっては東急の遊園地である二子玉川園があったところである。再開発されてライズという名前のショッピングセンターを中心にホテルやオフィスも含んだ複合施設へと変身した。



東急二子玉川駅を降りた駅前の広場の様子。若い人が多くファッショナブルな街という印象である。



楽天の新本社(「楽天クリムゾンハウス」と呼ばれている)の遠景。



近くから見た楽天の新本社。このビルにプロジェクションマッピングを行えば迫力があるというアイディアが浮かんできた。それと同時にガラス面が多いので大変かなという考えも浮かんでくる。



トークショーの会場となる楽天本社の会議室。これまで報道発表等には使ったが社外の人が行うイベント(もちろん楽天が主催するわけであるが)は始めてではないかとは楽天の担当の人の弁である。



これはコントロールルームから会場を見たところ。



トークショーが終わった後で来てくれた知り合いの方々との記念写真。私の右隣は黒川未来夫氏。有名な建築家である故黒川紀章氏の子息である。一番右はシンガポール時代に知り合った佃さん。シンガポール国立大学(NUS)のリー・クアン・ユー公共政策大学院に留学中である。