シンガポール通信-文化とコンピュータに関する国際会議

10月17日(土)から19日(月)まで京都大学において、Culture and Computing 2015と称する国際会議が開催された。この国際会議は文化をコンピュータでいかに扱うかに関する研究成果を発表したり議論したりするものである。京都大学の石田先生、土佐、および立命館大学の八村先生が中心となって2011年に発足した。私も運営委員として参加している。

2011年に第1回が開催されて以来、2年に一度京都で開催することとしている。通常の国際会議は種々の国々で持ち回りで開催するのが通常であるが、Culture and Computing国際会議は京都を中心として開催することにしているのを特徴としている。それはなんといっても京都が長い文化と歴史を持っており、文化に関する国際会議を開催するのに適しているからである。

最近の京都を訪れる観光客が急増していることと比例して、本会議の参加者も京都観光を兼ねて本国際会議に参観する人が多くなってきている。毎回京都観光を兼ねて本国際会議に参加することを楽しみにしている参加者も増えてきたため、今後も京都を中心として開催する予定である。

参加者は約100名と決して多くないが、海外からの参加者が過半数を占めていること、また海外からの参加者の国籍が多岐に渡ることを特徴としている。ちなみに今回は30カ国近い国々から参加者があり、このような参加者の国籍が極めて多岐に渡るという国際会議は工学系ではあまりないのではないだろうか。

これはやはりこの国際会議が文化とコンピュータという特徴あるテーマを掲げているからであると思われる。また発表内容も参加者の国籍が多いのに比例してそれぞれの国の文化を前面に出した研究結果の発表が多く、聞く方も大変楽しませてもらえる。

いずれの国際会議でも論文発表の他に技術展示が行われることが多いが、本国際会議は文化に関する国際会議であることを考慮に入れて、展示も技術的なものより文化的な展示に力を入れてきた。今回は私と土佐が展示の責任者も兼ねており、文化にちなんだ展示ということで「文化と起源」というタイトルの展示を行った。

文化の歴史は人類の歴史でもあり、文化の起源は人類の起源にまでさかのぼると考えられる。それが時代を経て日本では生け花、和菓子などの繊細な文化へと発展してきた。これらを会議の参加者にわかりやすく訴えるために、まずは文化の起源を象徴するものとしてゴリラの写真展を行った。ここでは京大の大塚君というゴリラ写真家志望の学生のとったゴリラ写真の展示をおこなった。

さらに日本における独自の文化の代表として生け花の展示と和菓子の製作の実演を行った。生け花の展示は未生流笹岡家元笹岡隆甫さん、また和菓子の製作実演は京都の有職菓子御調進所老松のご主人太田達さんに行ってもらった。さらに現代の文化として土佐による土佐琳派メディアアートの上映を行った。

このような京都の伝統文化と深く関わった展示会を国際会議の展示として行えるのも京都ならではという気がする。参加者にも大変喜んで頂くことができた。



国際会議開始前の様子。



会議では私の古くからの友人であるオランダ、アイントホーベン工科大学教授のMatthias Rauterbergと久しぶりに会うことができた。久しぶりの再会ということもあり、彼が京都滞在中の4日間毎晩深夜まで飲みかつ議論した。




展示会場の準備の様子。笹岡隆甫さんに生け花の展示をお願いしたが、本展示会のタイトル「文化と起源」をよく理解してくださり、ジャングル的にも見える草木の展示をして頂いた。その間に大塚君によるゴリラの写真が展示してあり、さらにはスクリーンには土佐のメディアアート作品「TOSA RIMPA」を上映してある。



これは実験的に土佐の作品を液体窒素スクリーンに投影したもの。液体窒素が気化する際に生じる雲状のものにプロジェクターで映像を投影する。



投影した映像。3次元的な重なりを持つ液体窒素の雲に投影すると、立体的で神秘的な映像が得られる。



これは老松のご主人の太田さんによる和菓子の製作の実演の様子。海外からの参加者にも理解してもらえるように、太田さんの弟子の外国人の女性が説明を務めた。



会議での発表で、土佐が指導している中国から留学してきている大学院生パン君が、優秀な研究ということで賞を受賞した。



最後の本国際会議の運営委員による記念撮影。



その後は恒例の懇親会。ここでも京都では結構知られている懐石料理の店での懇親会となり、海外からの参加者は大喜びであった。懇親会の会場にて、一番右が液体窒素スクリーンで土佐と共同研究している京大名誉教授の前川先生、その左が老松のご主人の太田さん。