シンガポール通信-2015年世界大学ランキング2

現在関西空港のラウンジで韓国行きの飛行機を待っている。韓国に着いたら前回書いたように、韓国の大学の先生にソウル大を始め韓国の大学が今年のTimes Higher Educationでランキングの順位を昨年に比較して大幅に低下させた理由を彼らがどう考えているかを聞いてみようと思っている。

その前にTHE (Times Higher Education) World University Rankingの結果をもう少し分析して原因を探ってみよう。このランキングにはPerformance Breakdownと称して個別の評価要素ごとの評価も載っておりもう少し詳しい分析も可能である。

Performance Breakdownの中身は、Teaching(教育)、International Outlook (国際的な知名度)、Research(研究)、Citation(引用:他の論文から引用された件数)、Industry Income(企業からの収入:企業との共同研究などによる収入)であり、適切と考えられる。

シンガポール国立大(NUS)、東大、京大、ソウル大の4大学の各数値をまとめて表にしたものを表1にまた図にしたものを図1に示す。


表1 項目別の大学評価結果

図1 表1を図にしたもの


これからわかるのは以下のようなことである。4校の違いを見ると、ともかくも「国際的な知名度」で決定的な差がある。NUSの評価値がほぼ満点に近いのに対して、東大・京大・ソウル大はいずれも30前後と低い値である。これがNUSがアジアでトップの評価をされているのに対して東大、京大、ソウル大の順位が下がったことの大きな理由であろう。

もっともNUSの満点に近い国際的知名度というのも注目に値する。これは欧米の大学と比較してみても歴然としており、NUSは欧米の有名大学と肩を並べるかそれ以上の国際的知名度を持っているのである。さてそれでは国際的知名度は何で決まるのか。THE World University Rankingのホームページを見ただけではそれ以上の詳しい情報はわからない。

日本では大学に関しても国際化がうるさくいわれているが、日本での国際化は大学の多くの学生が海外に留学したり、多くの授業が英語で行われていたりすること意味しているようである。それはつまるところどこかの企業の「社内公用語英語化」と同じで、教師や学生の英語を使える能力を伸ばすことと捉えられているようである。

もちろんそれらも意味がなくはないが、ここでの国際的知名度はそのような単純なものではない。多くの外国人教員や海外からの留学生を持っていることも必要であろうし、大学の教員が海外の国際会議に頻繁に参加することも必要であろう。それらの結果としての世界レベルで研究者間で大学の名前がどの程度知られているかということになるのであるが、それだけではNUSと東大、京大、ソウル大の間でこのような大きな差が生じることはないのではないだろうか。

私見であるが、これまで多くのアジアの大学の先生方と付き合ってきた結果であるが、やはり日本と韓国の大学の先生方は基本的な性向として中国、シンガポール、オーストラリアなどの先生方に比較するとオープンさが足りないというか、内向けというかそのようなものを感じてしまう。いってしまえば日本人、韓国人の基本的な性格として内向けであって開放的ではないということになる。どうもこれが最後に海外の研究者からの東大、京大、ソウル大の各大学の評価につながり、それが国際的知名度という形で現れているのではないだろうか。

このような抽象的な言い方をするとそれではどうすればいいのかという質問に答えられにくくなって困るのであるが、国際的知名度においてNUSと東大、京大、ソウル大との間に圧倒的な差があるのはこのような民族的な性向と関係しているのではというのが私の考えである。