シンガポール通信—2015年世界大学ランキング:東大はいつNUSに抜かれるか?

世界大学ランキングに関してはいくつかの機関が毎年発表しているが、その中でも最も良く知られているTimes Higher Educationが2015年の世界大学ランキングを発表したので、それに関してコメントしてみよう。

まずは下の表1を見てもらいたい。これはアジアの代表的な大学のここ4年間のTimes Higher Educationの発表によるランキングを表にして示したものである。さらにこれをグラフにして示したものを図1に示す。2014/2015という表示は2014年から2015年にかけてのランキングであるという事を意味している。またここにあげた大学は2015年のランキングでアジアで100位以内に入っている大学に限ってあげてある。



表1 アジアの代表的な大学の世界大学ランキング



図1 アジアの代表的な大学の世界大学ランキング

まず第一にアジアの代表的な先進国である日本、韓国、中国、シンガポール、香港(香港は中国の一部であるが、独立性が高いので国として扱っても良いだろう)から、いずれも2つ以上の大学が100位以内にランキングされているのが注目される。これはこれらの国々が大学および大学院における研究・教育に力を入れている事を示しており、うなずけるところである。

もう一つは、日本が東大・京大の2つの大学がランクインしているのに対して、韓国はソウル大、KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology:韓国科学技術院)、 Postech(Pohang University of Science and Technology:浦項工科大学)の3つがランクインされている事が注目される。ソウル大は韓国における東大に相当するのでうなづけるが、KAISTは1981年に設立された国立の教育・研究機関であって、設立されてまだ30数年の歴史しか持っていない。それが世界大学ランキングの100位以内に入りしかも年々順位を上げている。さらにPostechは設立が1986年であるから歴史は30年に満たない。(Postechは私企業である製鉄会社が作った大学であり、それが短い歴史にも関わらず世界ランキングの上位に出てきたという事で暫く大変話題になった大学である。)

日本が科学技術大国を自任してきており、自然科学部門でのノーベル賞受賞者が日本が19人に対して韓国が0人であるのに、世界大学ランキングの100位以内にランクインする大学の数が日本が韓国に負けているというのは解せないではないか。これは別に日本対韓国に限らない。ノーベル賞受賞者においては圧倒的にアジアの他の国々に差をつけている日本が、こと世界大学ランキングになるとアジアの他の国々と良い勝負をされているというのは、不思議と言えば不思議である。

この事はまた別に論じたいが、まずは図1をみてアジアの代表的な大学の世界ランキングがどのように推移してきたかを見てみよう。そうすると気がつくのは、2011年時点では結構ばらけていた順位が2015年ではほぼ2つのグループに集約されてきた事である。2011年時点では東大、香港大、NUSの3大学が先頭集団を形成しており、それに続く第2集団を北京大、京大、Postech、香港科技大、精華大の5大学が形成していた。そしてそれらに遅れてKAIST、ソウル大、NTUの3大学が追いかけていたという状況であった。

それに対して2015年の世界大学ランキングでは東大、NUSが先頭集団を形成し、そしてそれに続くものとして香港大、北京大、清華大、ソウル大、香港科技大、KAIST、京大、NTU、Postechが一段となって第2集団を形成しているという状況である。

これを見ているとアジアの大学の格付けがある程度見えてきた気がする。この図をそのまま信じるならば、東大、NUSがアジアのトップ大学の二強だということになる。しかもいずれも並走しつつ徐々にではあるが順位を上げてきている。今後の注目はNUSがいつ東大を抜くか、そしてNUSと東大は20位以内に入れるかどうかそしてそれはいつかという事であろう。

この図を信じるならばと注をつけたのは、世界大学ランキングもランキングの調査・発表を行っている機関によって結構異なるからである。ただ、Times Higher Educationによるランキングは良く引用されるランキングであり、ある程度信用していいのではないかと考えられる。