シンガポール通信−東京に会社設立2

前回の続きであるが、東京に会社を設立するという話は、ひょんなことから生まれて来た。

このブログでも書いたが、今年の1月にシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ地区にあるアートサイエンスミュージアムで私のパートナーの土佐尚子のビデオアート作品を使ったプロジェクションマッピングを行なった。

その際に、自社が保有しているプロジェクターを使って実際にプロジェクションを実行してくれたのは、シンガポールのヘキサゴン(Hexogon)という会社である。ヘキサゴンはプロジェクションマッピングに必要な高輝度のプロジェクターを多数保有しており、シンガポールで行なわれるプロジェクションを用いたイベントの多くを引き受けて実行して来た実績がある。なかでもよく知られているイベントとして、毎年シンガポール独立記念日(ナショナル・デイと呼ばれており8月9日に行なわれる)に行なわれるイベントのプロジェクションを昨年および今年と担当している。



シンガポールのナショナルデイのイベント風景

その社長であるAdrian Goh(エイドリアン・ゴー)氏はまだ40歳そこそこの若手の実業家であるが、土佐の作品を気に入ってくれて、レンタル料が通常なら1日100万円近くする高輝度プロジェクターを割安の価格でレンタルすることに応じてくれた。

そのゴー氏と、プロジェクションマッピングが終了した後で今後の共同イベントの可能性を話し合っているうちに、東京にプロジェクションマッピングをメインにしたイベントの企画と実行の会社を設立してはどうかという話が出て来た。

ゴー氏の見る所では、これから日本でも東京オリンピックをにらんで多くのプロジェクションを基本としたイベントが開催される可能性が大きいので、シンガポールのビジネスを日本に延長し日本でもプロジェクションマッピングをベースとしたイベントの企画・実行がビジネスになると考えているらしい。

プロジェクションマッピングはレンタル料の高い高輝度のプロジェクターをそれも何台も使って行なうため経費が多くかかる。1月のイベントでは経産省のクールジャパンの助成金がついたという幸運があったとはいえ、私としては経費の工面に四苦八苦した経験がある。そのため当初は、お金の苦労を多々しなければならないイベントビジネスというのは二の足を踏んだのであるが、結局はゴー氏の情熱に押し切られて一緒に会社を作ろうという事になった。

シンガポールでは物事が素早く進むと言うが、確かに人の動きも素早い。ゴー氏と会社の設立の話をしたのは3月の中旬であるが、私達の間で合意が出来るとすぐに彼は動き始め、4月、5月、6月と数度にわたって日本に来て、会社の設立手続きやオフィス探しを開始した。

動きが速いのと同時にいろいろと注文にもうるさい。もともとデザイン系の大学を出ているデザイナーなので、オフィスにしても外観や内装にいろいろと注文をつける。当初は私だけでオフィス探しをしようと思ったのだが、結局は彼が自分でも見て納得したものを選びたいという事で、結局は二人で20カ所以上オフィス候補を見ただろうか。いつまでオフィス探しが続くのかと思わされた事もあるが、結局南青山にそこそこの価格のオフィスが見つかった。

骨董通りに面しており青山学院にも近い、なかなかファッショナブルな環境である。オフィスの賃貸契約を済ませた後で近くを散歩していると、すぐ近くに岡本太郎記念館があるのに出会った。中に入ってみると、あの有名な大阪万博の際の「太陽の塔」のミニチュアを始め彼のエネルギーにあふれた作品が陳列してある。彼のあのエネルギーをもらって今後の我々のビジネスに生かしたいものである。



オフィスの入っているビルの外観。少々古いがなかなかファッショナブルなビルである。



岡本太郎記念館で出会った「太陽の塔」のミニチュア。



岡本太郎の像と一緒に写真をパチリ。