シンガポール通信−シンガポールの生活費は世界一

さてSTAP細胞の話が途中に入ったとはいえ、3月の後半にブログの更新を行うのに1週間ほど間が空いてしまった。その間に4月になり、今日は4月3日である。

1週間ほどブログの更新に間が空いてしまったのには理由がある。その間にシンガポールでこれまで住んでいたシンガポール国立大学のアパート(シンガポール流に言うと「コンドミニアム」、略して「コンド」)を出て、より市内に近い場所にコンドミニアムを借り、引っ越しを行った。

シンガポール暮しも既に7年目になった。これまでを振り返ってみると、大学卒業後NTTは20年以上と長く在籍したが、その後はATR(国際電気通信基礎技術研究所)に7年、関西学院大学に6年と6、7年ごとに新しい職場に移っており、それに伴い住む場所も変わった。シンガポール国立大学での勤務も6年経過し、65歳の定年もとっくに過ぎた。今回非常勤の客員教授となったのを契機に大学外での活動を始めようと考え、それに伴い住居も変わった訳である。

シンガポールは最近の調査で生活費が世界一高い都市になったそうである。何がシンガポールの生活費を押し上げているのだろうか。シンガポールに住む時にまず最生活費に影響してくるのが車の購入費が高額である事である。COEと呼ばれる車を購入する際に納める税金が600万円〜700万円もする。また車の輸入に伴う関税も大変高いので、全体としての車の購入費が高騰する。日本で200万円程度のカローラクラスの車が約1000万円だと聞いた。何と日本で購入するのに比較すると5倍の価格である。ベンツの中級クラス(日本だと800万円程度)だと2000万円はするとのことである。

このような価格なので、日本から来た私などはとても車を買う気はしない。しかしシンガポール人は元々そのようなものだと思っている事もあって、車の普及率は大変高い。しかもカローラとベンツの中級クラスの価格差が2倍程度なので、どうしても欧州の高級車の方に目がいってしまうようである。

最近は輸入車の中で欧州の高級車の割合が高くなっているとの事である。昨年は最も多かった輸入車BMWとのことで、トヨタは2位もしくは3位ということらしい。ともかくも街を走っている車を見ているとBMWとベンツがやたらに多い事に気付く。大学でも教授クラスだとベンツの所有率が多い。しかもシンガポールは夫婦とも働くのが普通なので、旦那がベンツで奥さんがBMW、そして家ではメイドを雇っているというのがこちらの大学の教授クラスの普通の暮しのようである。日本ではとても考えられない状況である。

さて車とともにシンガポールの生活費を押し上げているのは住居費である。シンガポールでは HDBという政府が供給している住居(日本で言うと公団住宅に相当)と、民間業者が立てるコンドミニアム(日本だとマンションに相当)の2種類ある。シンガポール人の多くはHDB に住んでいると言われているが、これも価格高騰が激しく最近では購入すると5000万円以上はするようである。さらにコンドミニアムになると最低でも1億円、上は天井知らずということらしい。

もちろん私に買える訳は無いので借りる訳であるが、賃貸料も大変高い。シンガポールは寝室の数で家の大きさを示す。3寝室、2寝室が通常である。寝室にリビングルーム・キッチン・書斎がつくので3寝室だと日本流で言うと4LDK、2寝室で3LDKといったところか。賃貸料が3寝室だと月40万円〜50万円、2寝室で月30万円〜40万円はする。あまりにも高いので、最近は独身者やカップル用に1寝室という狭めのコンドミニアムも増えて来たが、こちらも月20万円〜30万円はする。

車と住居、この二つがシンガポールの生活費を押し上げている事は間違いない。車と住居を除くと、シンガポールの生活費というのはそれほど高くはないのではないか。MRT(地下鉄)やバスなどの公共輸送網が整っており、料金も大変安い。2ドルもあれば何処にでもいける。タクシー代も日本に比較するとかなり安く、10ドル(800円)もあればシンガポール市内だとたいていの所には行く事が出来る。

さらに食費も大変安い。ホーカーズという日本流に言うと屋台村が点在しており、5ドル(400円)もあれば食事をする事が出来る。朝・昼・夜と1日3食ホーカーズで食事をしても1日15ドル、月に450ドルである。私は毎週末明治屋で米・納豆・豆腐・野菜などの日本食材を買い込んで自炊しているが、400ドル(3万円強)もあれば1ヶ月生活できる。もちろん友人や知り合いなどとレストランで食事をすると、アルコール込みで一人1万円はするのでこれが食費を押し上げる事になるが。
さらに衣服費であるが、常夏の国シンガポールでは衣服費は大変安い。だいたいTシャツ・短パンで事は足りる。大学へ行くのもラフな格好の先生はそのまま、もう少し気を使う先生でもジーパンに半袖シャツという格好である。私は日本に帰国する際に時々ユニクロでズボンとシャツを買う事にしているが、年に3着も買えば十分である。下着を入れても年間の衣服費は2〜3万円といった所か。

したがって車持たずに住居費さえ抑えれば、シンガポールというのは生活費もそれほど高くなく住みやすいところである。学生達はHDBを1ユニット借りてそれを友達と共有している例が多いが、これだと毎月10万円以下で住む事ができ、日本並みではないだろうか。従って全部入れても月15万円もあれば生活できる。これは日本と同じ程度ではないだろうか。