シンガポール通信−ボルネオ島観光

ボルネオ島にあるインドネシアのクチンで行なわれた国際会議の合間に、短時間の観光をした。観光と言っても、クチンから車で1時間ほどの所にある文化村というインドネシア先住民族の伝統文化を展示してある施設の見学であるが、これまでほとんど知らなかったボルネオ島の文化の一端に触れる事が出来、大変興味深かった。

ボルネオ島は日本の国土の約1.9倍の面積を持つ大変大きな島である。世界の島の中では、グリーンランド島、ニューギニア島に次ぐ面積を持った面積第3位の島である。現在はマレーシア、インドネシアブルネイの3カ国がボルネオ島を分かち合って所有している。

ボルネオ島には多くの種類の先住民族が住んでいる。もちろんこれらの人々はもともとはアジア大陸から移住して来た同じ民族であるが、山地の多いボルネオ島の各地で隔離された生活を続けて来たため、それぞれ独自の文化や言語を作り上げて来た。言語の種類だけでも114言語が話されているという。

文化村ではそれらの先住民族の内代表的な民族の住んでいた家、内部の調度品等を復元してある。また劇場があり、定期的に先住民族の踊り等を披露している。写真等で見た事はあるとはいえ、実際に先住民族の住んでいた家の内部を見学したり、また彼等の踊りを鑑賞したりという体験は得難いものであった。

特に印象深かったのは、踊りの中に日本の文化と類似したものが含まれている事である。地理的には遠く隔たっているから、多分独自に発達して来た文化だと思われるが、同じような気候風土のもとでは似通った文化が発達するものだということを感じさせられた。



文化村の入り口。水曜日の午前中なので観光客は少ないが週末には多くの観光客が訪れるとの事。



これはロングハウスと呼ばれる先住民族の家。丸い形状をしているのにロングハウスというのは不思議であるが、多くの家族が同居していた家だとの事。



これはロングハウスの内部。真ん中に調理等を行なういろりがあり、その周辺に複数の家族のスペースがある。プライバシーは全くないので、親戚等のかなり近い関係のある家族が住んでいたのであろう。



これは別の先住民族の家。こちらはロングハウスという名前の通り長い家である。向かって右側にそれぞれの家族が住むスペースが壁とドアで仕切られており、家族毎のプライバシーは一応守られている。中央および左側のスペースは共通スペースとして使われた。



これもまた別の家。高温多湿な土地であり、かつ各種の野生動物から身を守るため、高床式の住居になっている。また梯子はいつでも外せるような構造になっている。



これは家の入り口に描かれた絵。樹木をモチールとしたデザインで抽象画としてもなかなか面白い。



そのデザインをバックにして記念写真。上半身裸の男性がこの家の説明をしてくれるガイド。先住民の衣装をしているがもちろん常にこのような服装をしているわけではなく仕事として着ているのであろう。



一通り見て回った後で文化村内部の劇場で先住民族の踊りを鑑賞した。各種の先住民族の衣装や踊りは、それぞれに似た所と異なる部分が混在している。同時に興味深かったのは、日本文化との類似である。この写真で前面で踊っている女性たちの後ろの男性は踊っているのではなく、ポーズをとったまま静止している。日本文化で言えば歌舞伎の「見得」である。そういえばポーズそのものも歌舞伎の見得によく似ている(特に左側の二人の男性のポーズ)。もちろん南蛮貿易が盛んであった頃に日本とボルネオ島の間に文化交流がありそれが現在まで残っているという説明も出来るが、同時に似たような風土の基では似たような文化が生まれるというのも別の説明としてありうるのではないだろうか。



こちらは別のダンス。男性が棒の上でいろいろなパフォーマンスをしている。これは日本で正月の消防の出初め式などで披露される「梯子乗り」にそっくりである。これも上の「見得」と同じ理由で説明できるのだろうか。