シンガポール通信ー関西学院高等部の学生さんが来所

先週関西学院高等部の学生さん3名が、引率の宮寺良平先生に連れられて、私の勤務しているインタラクティブディジタルメディア研究所CUTEセンターに来所された。私は関西学院大学に6年間勤務していたので、関西学院高等部の学生さんたちはいわば私の後輩である。

関西学院大学は、「関関同立」と称される関西の私学の雄の一つである。現在でも阪神間では、子供を入れたい大学としては常にトップクラスの人気を誇っているし、関西の企業の社長を輩出しているという意味でも常にトップクラスである。かっては、「関関同立」の中でも同志社大学と並んでトップを争っていたものである。

しかし残念ながら、全国的には最近は旗色が悪い。最近もっとも全国的に知名度の高いのは立命館だろう。大学経営にトップダウン的な経営方針を取り入れ、企業との共同研究の推進や海外からの留学生の受け入れに熱心なこともあり、企業からの評判もいいし海外の学生にもある程度知られている。それに刺激を受けてか最近は同志社大学も同じような方向を目指しているように見える。

それに比較して、関学は全国的な知名度の点からは立命館同志社に水をあけられているといっていいだろう。むしろ関学は、全国的には、教育や研究面での強みのある大学というより、アメフトの強い大学という意味で知られているといっていいだろう。

その理由はいろいろあるが、中にいた事のある人間の感想としては、過去の名声にとらわれているという感じがする。阪神間では私学としては絶対的な人気を持ち、現在でも企業内でも強力なネットワークを持っている。そのため、父親が関学を出て会社でそこそこの地位におり、子供も関学に入れたいという風潮は阪神間ではいまでも根強い。

そのため、先生方のプライドも高く、少子化時代に備えて他の大学が海外からの留学生の受け入れに熱心に取り組み始めても、まだまだそのような危機意識が薄く、先生方の考え方にこれまでのままで良いという姿勢が強いように見える。

ところがそうこうしているうちに、大学も国際競争の時代になった。このブログでも書いたように、大学も「世界大学ランキング」を意識しなければならない時代になっている。しかしここでも関学の動きは遅く、世界大学ランキングでは立命館同志社がなんとか700位前後にランキングされているのに対し、関学はそれ以下のその他大勢という扱いをされている。

この関学の国際性の低さは私も気になっていたので、今回関西学院高等部の学生さんたちがシンガポールに来てくれたというだけでも、私にとっては大変うれしかった。しかも聞いてみると、高校生を対象とした数学の世界コンテストの準決勝に出るためとのことである。

数学の国際的なコンテストとしては国際数学五輪などがあるが、通常のコンテストは数学の問題をいかに早く正確に解くかが評価の対象になるのに対し、今回のコンテストは純粋数学が対象で、いかにスマートに定理の証明などが出来たか等が対象になるとの事である。

全国の大学の学生の抽象思考能力が低下気味であるというのはよく聞く話しであるし、私も関学で教えていた頃には同じような感想を持ったものなので、関学の後輩に当たる関西学院高等部に抽象思考を必要とする純粋数学に興味がある学生さんたちがいるというのは大変心強い。

もちろん指導されている宮寺先生の熱意が大きいのであろうが、抽象思考能力は物事を大きく変える時に必要な能力であり、今後も現在の興味を持ち続けてもらいたいものである。



CUTEセンターの研究員の説明を聞く関西学院高等部の学生さんたち。中央が引率の宮寺先生。その左の3名が高等部の学生さんたち。



最後に記念撮影。前列右3人が学生さんたち。後列右端は学生さんたちを連れて来てくれたキッコーマンシンガポールの林さん。その左が宮寺先生。