シンガポール通信ー文化とコンピュータ国際会議

先週京都大学で開催された文化とコンピュータ国際会議に出席した。

この会議は、コンピュータを使った文化の研究に関する国際会議を開催しようという事で、京大の石田先生、土佐先生、立命館大の八村先生などが中心になって立ち上げた国際会議である。2年前に第1回が京大で開催され、昨年の第2回は中国、そして第3回の今回は京都の立命館大学で開催された。

コンピュータを使った文化の研究というのは、文化財等をディジタル化してコンピュータに記憶したり、またそれらをバーチャルリアリティ技術を使って再現したりする研究がこれまでの潮流であった。その場合はコンピュータの役割は文化コンテンツの記憶ということになる。

それに対してこの国際会議では、コンピュータを使ってもう少し文化の本質に切り込んでいこうとするものである。いわば文化の分析をコンピュータを使って行なおうという事をめざしていると考えれば良い。例えば能や歌舞伎の役者の動きを分析してそれを欧米のダンスの動きと比較してどこに類似点と相違点があるかを調べたり、日本の古典のストーリーと欧米の古典のストーリーを比較してストーリーの東西の違いを明らかにする、などの研究テーマが考えられるだろう。

この手の研究はこれまで文系の研究とされて来た。それをコンピュータを使う事により、理系のアプローチで切り込めないかを研究する分野であると考えても良いだろう。理系の研究者は、どうも文化の本質を研究するのは理系の仕事ではないと考えがちであり、それがこれまでこのような分野の研究があまり行われなかった理由であろう。

もちろん文化のコンピュータによる取り扱いは文化に対する知識を求められるから、文系の研究者との共同研究を行なう事は必須であろう。また文化コンテンツを取り扱うことが多い事から、アートやデザインの分野の研究者との共同研究も必要であろう。

いずれにせよこのような理系と文系の境界領域分野は立ち上げに時間がかかるので、少し腰を据えて進める事が大切だと思っている。



会議の最初にオーガナイザの立命館大学八村先生による招待講演者の紹介。招待講演は京菓子の会社を経営しておられる太田さんによる京菓子に関する講演。



これは私の講演風景。最近は私は技術的な話はあまり行なわず、もっぱらメディアの歴史の話しや最近のメディアが人々の行動に及ぼす影響等の話をする事が多い。



会議の合間にオランダのアイントホーベン工科大学のチームとの記念写真。私の左側は京大の土佐先生。左端のProf. Matthias Rauterbergとはもう10年以上のおつきあいである。来年から客員教授として彼の大学に年数ヶ月滞在の予定をしている。



これは招待講演者や招待者との記念撮影。左端は東大の池内先生。かってはカーネギーメロン大学で画像処理の研究をしておられたが(その頃ゴルフを一緒にした記憶がある)、最近は世界各地の大型遺跡を撮影してディジタルデータ化する研究をしておられ世界的に知られている。私の左側は黒川紀章都市設計建築事務所の社長の黒川未来夫さん(黒川紀章氏のご長男)。



文化に関わる国際会議という事で京都の伝統産業の会社による展示ブースを会議の期間中設けた。京都の伝統工芸職人がその場で彼等の仕事風景を見せてくれる仕掛けになっており、特に海外からの会議参加者には大変評判であった。



これは京扇子の展示ブース。



国際会議にはバンケットと呼ばれるディナーの場が設けられるのが通例である。京都らしく料亭において行なった。これはバンケットにおける池内先生のあいさつ。



そして京都の料亭でのバンケットと言うと舞妓さんが出てくるのが定番。あまりにも定番過ぎるきらいもあるが、日本人でも喜ぶのだから外国人には大変好評で後で一緒に記念撮影する外国人が列をなしていた。



そしてこれもまた私が参加する国際会議では通例になってしまったが、バンケットのあとは二次会に繰り出す事となった。アイントホーベン工科大学の連中と祇園に繰り出す事となったが、何度も来日している先生も多いため、彼等はそこらの安い居酒屋では満足しない。結局、祇園の和風のバーに彼等を案内する事となった。昔はこれらのバーは一杯飲むと1万円近く取られたものであるが、最近はかなり安くなっており、おごる立場としては大変助かる。