シンガポール通信ーナレッジ・キャピタル(グランフロント大阪内)訪問

先週帰国した際に合間を見つけて、最近話題のグランフロント大阪内のナレッジ・キャピタルに出かけた。グランフロント大阪はJR梅田駅の北側にある梅田貨物駅の跡地を再開発して出来た商業施設およびオフィス施設である。ナレッジ・キャピタルはグランフロント大阪内にある研究開発施設を集めた場所である。

梅田貨物駅はかって北ヤードと呼ばれていた巨大な貨物駅であるが、荷物のコンテナ化に伴い大型の貨物駅が不要になって来たという経緯がある。同じように貨物を扱う施設として、大阪の近くには吹田操車場があった。ここはかっては貨車を行き先別に入れ替えるための巨大な施設であったが、これもまた荷物のコンテナ化に伴い貨車の入れ替え作業というのが大幅に減り、吹田操車場は廃止された。

吹田操車場の跡地に梅田貨物駅の機能を移転する事により、大阪で残された最後の一等地と言われる梅田貨物駅跡地を再開発しようというのが、梅田北ヤード再開発計画である。再開発計画の最初のプランとして、跡地の東側に商業施設、オフィス施設、さらには住居施設を収容する4棟の高層ビルが建設された。これらの高層ビルを称してグランフロント大阪と称している。

当初からこれらのビル群の中に最先端の研究開発施設を誘致し、一般の人々に最先端の研究成果に触れてもらおうという計画があった。計画された当時はロボットの研究のブームであった事もあり、ロボット関係の研究施設を充実させると共に、いわば街全体をロボット化してロボットシティと呼ぼうという案もあった。私もロボットシティの計画に一時関わっていた事がある。

経済の沈滞と共にロボットシティの案が後退したためどうなるかと見守っていたが、ロボットに特化するのではなく最先端の技術を展示するナレッジ・キャピタルという形で実現する事となった。グランフロント大阪は商業施設を短時間訪れたことはあるが、ナレッジ・キャピタルはまだ見ていなかったので、少し様子を見ておこうというわけである。

ナレッジ・キャピタルはグランフロント大阪の北館の中にある。大きな吹き抜けの空間を中心として最新の技術を展示する「ザ・ラボ」、多目的型の劇場、さらには大学、企業、クリエーター等がオフィスをかまえる「コラボオフィス」などが用意されている。

かなり予算がかかったかと思われ、行政からの援助が大きいのではと考えていたが、聞いてみるとすべて民間の力で運営しているとの事である。行政の力を借りず独り立ちしているというのは大変立派であると思う。ただ、開業時の熱気が過ぎて来客の数も現在のような大人気の状況が終わった時に、どのように運営して行くかが課題と思う。



グランフロント大阪北館の内部。大きな吹き抜けの空間があるのが特徴。



吹き抜けの空間を中心として展示スペース、講演会場、大学や企業のオフィススペースなどがある。



これはデモスペースの一つ。大学や企業が最新の技術を展示している。



これはNICT(情報通信機構)のデモスペース。巨大なスクリーンに眼鏡不要型の立体像を表示した立体視システムである。立体視の基本的な仕組みは、スクリーンに小さなかまぼこ型のレンズ(レンチキュラーと呼ばれる)をならべた方式である。簡易な立体像表示方式としておもちゃ等でもよく見かけるものであるが、ここの立体視の特徴は人が左右に動き視点が移動して行くに伴い、見える像そのものが立ち位置によって変って行く事である。おもちゃの立体視の場合は横にずらして行ったも見える像そのものは変らない。しかしこのNICT方式だと、立ち位置をかえて行くとそれまで陰に隠れて見えなかったものが見えてくるなどの本当の立体視を体験できる。



これはスクリーンの裏側。立ち位置によって見える像が変る仕組みは、200台のプロジェクターを用意して、立ち位置によって異なる200種類の画像を表示しているところにある。大変巨大なシステムであるが、本当の立体視を実現するというのがなかなか大変な仕事である事がわかる。



訪れた当日はたまたまバーチャルリアリティVR)研究で有名な東大の廣瀬先生が一般の人たちを対象としたVR技術の講演をしておられたので、拝聴した。



講演終了後に記念写真を撮らせてもらった。右から私、廣瀬先生、土佐さん、京大に台湾から来ている女性留学生。



もう一つのサプライズは中山さんにあった事である。彼はかって私が立ち上げたロボット関係のベンチャー会社で立ち上げの当初から働いていた。会社を閉じた後はロボットのデザインの仕事等をしていたが、ナレッジ・キャピタル開設に伴いその運営会社で働く事になったとの事である。元気に仕事をしているようでなによりである。