シンガポール通信—シンガポールでアート個展を企画?

私のパートナーの土佐尚子が、シンガポールで彼女のアートの展示会を開催する事を企画したいということで先週シンガポールに来たため、3日間いろいろな組織を訪問してその企画を先方と話し合った。

私がシンガポールに来た5年前は、まだシンガポールはアートにはあまり関心のない国であった。もちろんSingapore Art Museum、Asian Civilizations Museumなどの美術館はあるのだが、どちらかというと近代的な都市には美術館が必要だという程度の考え方で設置されたものが多く、特にアジアの現代美術等に関してはほとんど関心がなかったといっていい。

ところが最近はシンガポール政府が音頭をとって、シンガポールでも現代アートに関する動きが活発化して来た。これはもちろん、シンガポールの経済が成長をとげ、シンガポールが世界の先進国に引けを取らない現代国家・現代都市になったことが大きな理由だろう。そのため、そろそろ美術に関心を向け始める余裕ができたということではなかろうか。

具体的には、1)ArtStage Singaporeという大がかりなアートフェアを年一度マリーナ・ベイ・サンズで開催する、2)現代美術の蒐集・展示を目的とした美術館を建設中、3)世界の有名ギャラリーを一カ所に集めた地域(Gillman Barracks)を造成、などの美術関係のイベントが目立って来ている。テレビの朝のニュースでも美術館で開催されるアート展示の紹介が時々行われている。5年前にはとても考えられなかった状況である。

まずは、知り合いを通して紹介してもらったArtScience Museumを訪問した。この美術館は、Marina Bay Sansのホテル・カジノなどを経営しているアメリカ資本の会社が建設したミュージアムで、花が開いたユニークな形をしている事で広く知られている。

幸いにも彼女の作品を気に入ってくれて、来年早々にでも彼女の個展を開催するという方向で話を続ける事となった。もちろん実際の開催にはまだまだ乗り越えるべき事があると予想されるが、ともかくも一つの収穫である。

翌日はURA (Urban Redevelopment Agency)を訪問した。こちらは名前の通りシンガポール市街の再開発を担当している政府機関である。地域別の部門に分かれているが、そのうちでMarina Bay Sandsを担当しているグループとミーティングを持った。 この部門ではMarina Bay Sands地域の振興のために、年一回iLightという光を使ったアートイベントを開催している。

彼女の作品の個展を行う可能性を話し合ったが、iLightの一つの催しとして行う事が可能ではないかということになった。ただMarina Bay Sandsエリアで行うアートイベントなので、上記のArtScience Museumとの調整も必要なようである。今後も話し合いを継続する事で合意した。



ArtScience Museumの外観。花びらが開いた形をしたユニークな形状でよく知られている。



ArtScience Museumの入り口。外観の形状がユニークなため、内部の設計はかなり苦労したとの事である。



ArtScience Museumの遠景。この外壁に映像を投影するというイベントを行いたいので、今後はそれをどう実現して行くかを美術館側と話し合う予定。



URA (Urban Redevelopment Agency)のロビー。日本は官庁は霞ヶ関界隈に集中しているが、シンガポールは市街のあちこちに政府機関が分散している。官庁街を設けないのは何か具体的な政策に基づいているのか知りたい所であるが、担当者レベルではわからないようである。



これはURAのロビーに展示してある数年後に予想されるシンガポール市街のミニチュア。これから建設予定のビル群は半透明のプラスチックで作られており、今後どこにどのようなビルが建てられるのかがよくわかる。



これはMarina Bay Sands地域のミニチュア。今後Marina Bay Sands地域では大がかりな再開発が予定されており、それが完成すればシンガポールスカイラインも大きく変わる可能性がある。中央付近に3つのビルを並べた形でよく知られているMarina Bay Sands Hotelが見えるが、それもかすむほどのビル群である。



夜は知り合いといつもの和食レストランで会食。右の二人は、NUSのLee Kuan Yew School of Public Policyに日本政府や大学から派遣されて留学している人たち。その左は共同通信シンガポール支社の方。