シンガポール通信ー格安航空(LCC)体験記

ここ一ヶ月で何回か海外出張をしたが、そのうちの何度かは格安航空会社(Low Cost Carrier: LCC)を利用するチャンスを得た。

格安航空はこれまでもずっと気になっていた存在である。既存の航空会社に対して半分もしくはそれ以下の低価格で航空券を提供する、格安航空会社が提供する飛行機の旅とはどのようなものだろうというのが、私の大きな興味であった。とはいいながら、格安航空がここ数年で大きくなって来た新しい業態である事や、格安航空会社が提供しているフライトが数時間という比較的短時間(短距離)のものであることなどから、シンガポール・日本往復を中心とした私の海外出張の形態ではなかなか格安航空会社を利用するチャンスがなかった。

ところが、11月から12月にかけてマレーシアに何度か出張する機会があったので、格安航空会社の一つであるエアアジアを利用することができた。また、12月半ばに台湾に出張する機会があったので、この機会を利用して別の格安航空会社であるジェットスターを利用してみた。もちろん、日本でももう格安航空を利用された経験のある方は多いと思われるが、私なりの格安航空の利用体験記をまとめておきたい。
まずはチェックインを行うカウンターである。通常の航空会社の場合でもパックツアーの場合は、関空や成田の例を見てもわかるように、通常のカウンターではなく臨時に作った簡易型のカウンターを利用する事が多い。したがって、格安航空会社のチェックインカウンターはそれと同等以下のものを予想しがちである。そんなことはない。空港にある通常のカウンターを使って通常のようにチェックインできる。(パック旅行の場合のチェックインカウンターは、航空会社のものではなくてパック旅行会社が用意したものである。)

ただし一緒に持って行く手荷物には制限を受ける。通常は機内に持ち込める荷物は2個まででさらに重量制限を受ける。通常は10Kgであるが、航空会社によってはもっと制限を低めに設定している所もある。これを超えると、チェックインカウンターで預ける受託手荷物の方に回されてしまう。また受託手荷物に関しては、通常の航空会社に比較してかなり厳しい重要制限があり、それを超えると超過分に関して料金を支払う事になる。

もっとも最近は、各航空会社ともチェックイン時の手続き簡素化のために自動チェックイン機を用意しており、カウンターの数が極めて少なくなっている事が多い。そのような場合に受託手荷物を持っているとチェックインに時間がかかる事もあり、私は旅行の際には最小限の物しか持参しない事にしている。具体的に言うと着替えのための下着・洗面用具・パソコン程度しか持って旅行しない。気候がシンガポールと同じような国(たとえばマレーシア)へいく場合はこれで十分である。気候の違う国に行く場合は着替えの上着、時にはコートを用意しなければならないが、これも最小限にとどめている。従って最近は原則として手荷物はあずけないことにしている。こちらの方がずっと迅速に行動できる。

さて肝心なのは機内に入ってからであるが、エアアジアジェットスターともに以外に機内が新しくて清潔である事に感心させられた。LCCはいずれも新しい会社なので使用機材も新しいのであろう。通常の航空会社のお古の機材を利用しているのではと勘ぐっていたのであるが、それは見事に裏切られた。

次に乗務員(いわゆるフライトアテンダント)であるが、これはいずれも一様に大変若い。20代だろうと見受けられる。また態度も通常の航空会社に比較すると、大変オープンで気楽な態度で乗客に接している。いってみれば、ホテルの受付とマクドナルドの受付の接客態度の違い程度の違いがある。明らかに乗務員の人件費で通常の航空会社とLCCでは差をつけているのだろう。従来型の航空会社の乗務員の接客態度になれていると、なんだか物足りなかったり、馴れ馴れしすぎると感じるかもしれないが、そんなものだと割り切れば問題ないのではなかろうか。

それから基本的には機内サービスに大きな差がある。飲み物や食事のサービスは全て有料である。したがってワゴンによる飲み物や食事のサービスは新幹線のワゴンサービスと同様と思えばいい。これも、従来型の航空会社であると、1時間程度の短時間の飛行でもシートベルトサインが消えるとすぐに飲み物のサービスや食事のサービスが始まるのでサービス過剰と感じていた人も多いだろうから、かえって気楽でいいのではなかろうか。この部分も費用削減で大きな意味を持っているのではなかろうか。

私自身も、マレーシアへの片道1時間程度の飛行はもとより、台湾への片道4時間程度の飛行でもまったく飲み物や食事のサービスの必要性は感じられなかった。第一飲み物や食事をとらないとその分トイレに行く回数も減るではないか。また映画などのエンタテインメントも基本的にはない。これも物足りなく感じる人もいるかもしれないが、短時間の飛行では特に不便に感じる事はない。自分の好きな本を読んだり、自分のスマートホン・iPadでゲームをしたり寝ているというのが、LCC利用時の最も有効的な機内での時間の過ごし方では無いだろうか。