シンガポール通信ーマレーシア工科大学での講演

このところどうしたわけか講演づいているようで、ここ3週間で4回の講演を行った。先週木曜(12月6日)には、マレーシア工科大学(UTM: University of Technology Malaysia)で講演を行った。

UTMは今年の夏頃に一度訪問し、そのうち一度講演をしてもらいたいとの依頼があった。今回私がUTMの主催する国際会議の副委員長(Co-Chair)を務めた事から、その国際会議に付随して学生相手の講演会を行うので講演してほしいとの依頼があったので、約束を果たしたわけである。

UTMは、シンガポールからジョホール海峡を渡ったジョホールバル市内にある。シンガポールからは車で約1時間の距離である。シンガポールとマレーシアの間の通関もごく簡単に済むため、気楽に国境を越えて行き来が出来る。マレーシアに住んで毎日シンガポールに車で通勤している人も多いとの事であるが、それもなるほどとうなづける。(マレーシアはシンガポールに比較して生活費が安いのでこれはなかなかうまい方法である。いわば日帰りの出稼ぎとでもいおうか。)

マレーシアはシンガポール同様に技術系の人材育成に力を入れている。UTMは重要なその一端を担っているとの事であり、国からも手厚い予算的サポートがあるようである。CG・アニメーションなどの技術にも力を入れており、CG・アニメーション学科は学年ごとの学生数が約100人程度いるとの事である。

卒業後はどこに就職するのだろうと心配してしまうが、この分野の産業は最近のびており、就職先には困らないとの事である。そのせいか学生達は少々のんびりしているようで、外部の人による講演会などを開催する事により、学生に刺激を与えようとの先生方の配慮なのであろう。

午前中の講演会には私の他に、ニュージーランドカンタベリー大学のビリングハースト教授、九州工業大学の尾下准教授が参加した。二人ともCG・アニメーション・バーチャルリアリティの専門家であり、学生達の学んでいる分野と極めて親和性が良い。

それに対して私の方はこの分野の専門家ではないので、何をしゃべろうかと考えたが、結局のところ京大で講演したのと一緒の内容である、メディアの歴史と今後の動向について講演した。学生さん達には少し抽象的な内容だったかもしれないが、先生方には好評であった。京大で日本語で講演した際には、いろいろと脱線して1時間半ほどしゃべってしまったが、英語になると脱線する余裕がないためか、質問の時間も入れて1時間で講演を終える事が出来た。

午後は部屋を変えて学生達との討論会を行った。討論会とはいっても、講演者の体験などを話す事により学生達にCG・アニメーションの分野での勉強・研究に興味を持ってもらいたいという、先生方の配慮によるイベントのようであった。ここでもまた私はCG・アニメーションの専門家ではないため、将来技術者になることをめざして学生時代をどう過ごすべきかという一般論をしゃべった。

とはいえ私の学生時代は学生紛争華やかなりし頃で、まともに学生時代に勉強をした事のない私の経験が、彼等にとって役立ったかどうか、いやむしろ理解できたかどうかは怪しいところである。ともかくも私自身としては大変楽しめた体験であった。



シンガポールからマレーシアに向けて出国するためのパスポート管理。まだ朝8時と通勤時間帯であり、長い車の列で30分以上待たされた。



講演の行われた会場。朝9時の開始であるが、9時時点ではまだまだ出席率は1/3程度か。何処の国も学生気質は同じようなものである。



最初の講演者はニュージーランドのビリングハースト教授。バーチャルリアリティの専門家であり、自分の専門分野の研究に関する講演内容であったが、バーチャルリアリティとCG・アニメーションは相性がいいので、学生もある程度理解できたと思われる。



次は九州工業大学の尾下准教授による講演。CG・アニメーションの専門家であり、学生達にも十分理解できたのではないだろうか。



このころになると、やっと一階席が埋まり、二階席が埋まり始める。女性の学生が多いのも特徴。女性が比較的積極的に質問するのも興味深い。



午後からは部屋を変えて学生達との討論会。左端はこの講演会を企画した、CG・アニメーション学科の学科長のスナー教授。学生達の興味を引きつけるような話題に関して討論が続くよう配慮しておられた。何処の大学でも学生達をうまく教育して行く事に関しては先生はなかなか努力しておられる。



討論会に参加した学生達。マレーシアはイスラム教の国なので女性のスカーフ(ヒジャブ)姿が目立つ。とはいいながらヒジャブをしてない女生徒も多く比率は半々といったところか。最近はヒジャブをしない学生も増えて来たとの事である。



最後に全員で記念撮影。何度も言うようだが全員での記念撮影というのはまだまだアジア的な習慣である。そのうち欧米でもこのような習慣が広まるのだろうか。