シンガポール通信ーリドニー・スコット監督「プロメテウス」

監督の「プロメテウス」を最近機内で観たのでその感想。

SF映画であり、しかも「ブレードランナー」「エイリアン」のリドニー・スコット監督となると、SF好きの私としてはぜひとも劇場で観たかったのであるが、このところ忙しくてなかなか劇場に行く時間が取れないうちに、シンガポールでも日本でも上映が終ってしまった。しまった観る機会を逃したかと残念に思っていたが、機内のエンタテインメントとして供されている映画に含まれていたので、最近観る事が出来た。

とはいっても、シンガポール航空とタイ航空の機内で、しかもいずれも夜行便なので続けてみるというよりは3回にわたって細切れでみたものである。また吹き替えではなく英語のままのものであったので、ストーリーなどを間違って理解しているところがあるかもしれない。そこは承知の上で読んでいただきたい。

もう上映も終ってしまったのでストーリーをネタバレしてもいいと思われるが、「プロメテウス」は人類の起源を求めて人類の起源となる知的生命体がいると考えられる惑星へ向かった探検隊が、そこで人類の起源と思われる「エンジニア」と呼ばれる知的生命体とさらにはその知的生命体を補食する事で生きている生命体に出会うという物語である。

後者の生命体は映画「エイリアン」に出て来る生命体に似ており、このことからも「プロメテウス」は「エイリアン」との関係がある事がわかる。後でネットで調べてみると、もともと「プロメテウス」は「エイリアン」の前日譚として企画・製作されたものだとのことである。

人類の起源を探るというテーマを中心に据えたものとしては、有名な「2001年宇宙の旅」がある。ということは、「プロメテウス」は「2001年宇宙の旅」と「エイリアン」をミックスしたような映画になることが予想されるが、まさにそのような映画である。しかもそのミックスが上手く行われているかというと、あまり上手く行われていないというのが私の感想である。いやもっと正直に言うと、全く失望させされたというのが本当のところである。

知的生命体の存在する惑星の風景、宇宙船の船内の白を基調とした作り、ディビッドと呼ばれる精巧なヒューマノイドロボットと宇宙船の乗組員のやりとりなど、随所に「2001年宇宙の旅」を思わせるようなシーンが出て来る。このあたりはなかなか映像的に美しいしカメラワークも注意深く構成されているので、「2001年宇宙の旅」を観たときのような知的興奮を覚えさせられる。特に、探検隊を乗せた宇宙船が知的生命体の住むと考えられる惑星に接近し、遺跡を発見してその側に着陸するあたりまでは、「2001年宇宙の旅」のようなストーリー展開を予測させられる作りになっている。音楽もそれを意識した上品で静かな調子のものが使われている。

ところが、遺跡の内部に入り「エンジニア」と呼ばれる知的生命体の古い死体を発見したり、さらにはそこにいるエイリアンなどの生命体に宇宙船の乗組員が襲われるあたりからは、全く「エイリアン」と同じアクション中心のストーリー展開になる。そして宇宙船の乗組員達が次々エイリアンや復活したエンジニアに殺され、最後に男勝りの女性乗組員一人が生き延びるというストーリーはまさに同じリドニー・スコット監督の「エイリアン」とそっくりである。

この全く異なるテイストのストーリーを継ぎ合わせたという感じを観客に与えるところに、この映画の問題があるというか、ある程度以上人々の興味を引きつけなかった理由があるのではないだろうか。米国ではそこそこヒットしたらしいが、私の知る限りではあまり話題になってはいないようである。

(続く)



「プロメテウス」の一場面