シンガポール通信—京都大学メディアセンターとのワークショップ

先週初めに京都大学メディアセンター (正式には学術情報メディアセンター)と私の勤務するインタラクティブディジタルメディア研究所(通称IDMI)の間でワークショップを開催した。

お互いの研究所に「メディア」という名前がついており、名前の通り画像や音声の認識技術、またそれらを使って人間同士、人間とコンピュータとのコミュニケーションをどう実現するかという研究を行っている。同じ分野で研究しているもの同士なので、共同研究など種々の面で協力できるのではというのがそもそもの発端である。

大学同士が研究協力を始めようかという場合には、まず「研究協力協定」と呼ばれる協定書を結んで、お互いに今後は研究協力を進めて行きましょうという意思表示を行う。この段階では単なる意思表示であり、具体的な中身はまだ決まっていないのだから、同じ分野同士であれば「研究協力協定」を結ぶ事は比較的簡単であるように見える。

ところがそこが大学という組織の常で(大学に限らないかもしれないが)、なぜ結ぶのかとか具体的にどのような研究協力を行うのかなどと、大学の上層部やさらには組織内部からもいろいろな意見・異論が出て来てなかなか協定を結ぶのに時間がかかるのが常である。

昨年の11月頃からその議論を始めたのであるが、今回は驚くほどスムースに話が進み、昨年12月にはIDMI側から私を含め3名が京都大学を訪問して研究協力協定に調印した。しかしながら、研究協力協定に調印したといっても、上に述べたようにそれは研究協力を行う意思表示であり、何の強制力を持っているわけでもない。具体的な研究協力を始めるためにはそれ以降も地道な努力が必要である。

やはり一度主要なメンバーが顔を合わせて、お互いの研究を紹介し合い、どの分野でどのような形で研究協力が可能かを議論してはどうかという事になり、それが今回のワークショップに結びついたわけである。今回は京大の先生方にシンガポールに来て頂きIDMIでワークショプを行う事となった。来て頂いたのは以下の6名の先生方である。

中島 浩教授(センター長)、岡部寿男教授、中村裕一教授、河原達也教授、土佐尚子教授、椋木雅之准教授

9月2日(日)にIDMI側の研究者とテーマ別の個別の議論、9月3日(月)に全員が集まってワークショップという慌ただしいスケジュールであったが、皆さん精力的に発表・議論に参加して頂いた。

私にとっては、京大の先生方はいずれもよく知っており、京大を訪問する際には顔を合わせたりしている。またIDMIの研究者達は、NUSの内部では常に顔を合わせている仲である。とはいいながらこれらの2つのグループの人たちは、これまでは私の中では全く異なるグループ、いいかえると全く異なる世界に属している人たちであった。その2つの異なる世界の人たちが一堂に会して議論している場に参加しているのは、少し不思議な気持ちを感じたものである。



これは京大の先生方に宿泊してもらったNUSのビジターズロッジ。外観は質素な造りに見えるが内部はそこそこ豪華で、各部屋にキッチンなども設けてあり長期滞在用に作ってある。



土曜の夜は京大の先生方を、3つのビルが屋上で連結されている観光名所のマリーナベイサンズの屋上のバーにお連れした。これは屋上から見た観覧車(フライヤー)。ひときわ明るくなっているのは9月下旬に行われるF1レースに向けてコースのセッティングを行っている場所である。



これは港の方をのぞんだところ。左側の2つの建物は最近完成した植物園。上の方に見える明かりは荷物の上げ下ろしを待っている貨物船の明かりである。



日曜の個別議論の終わった後は、シンガポール名物のチリクラブのレストランに招待した。慣れてしまうと日本のかに料理に比較すると食べるところも少なく少し不満に感じる料理であるが、ともかくも一度は訪れるべきところ。左から、岡部先生、河原先生、私、土佐先生、中村先生、椋木先生。



全員が集まって行ったワークショップの後で、主立った参加者でディナーを行った。場所はシンガポール側とセントーサ島を結んでいるロープウエィの乗り場にあるレストランである。小高い丘になっており、セントーサ島を含め海を見渡す景色がなかなかすばらしい。前列右手の京大メディアセンター長の中島先生は忙しい中参加して頂いたが、月曜の早朝便で着き深夜便で帰国するという日帰りの強行軍であったが、大変お元気であった。



終了後も記念撮影。京大の先生方は深夜便で日本に帰国であるが、まだ時間もあり、この後ロープウェイでセントーサ島にお連れして観光を楽しんでもらった。