シンガポール通信ーアジア化の流れとは?

最近うるさいほど聞かされるグローバル化の流れとは本当のところなんだろうか。私の意見では、結局のところ欧米もっと言うと米国の文化・技術をもっと取り入れる事によりビジネス面で欧米と対等に渡し合う事をめざす流れ、いいかえると欧米化の流れであると思っており、そのことをこのブログなどで主張して来た。そしてシンガポールの若手研究者や学生を対象とした調査においても、調査結果から彼らが同様の見方をしている事を示した。

さてところで一方、会議やディナーなどの公的な場で私的なメールをチェックするという私的な行為をする事が一般化している事を私はブログなどで述べて来た。そしてこのような行為は、日本人を始めとするアジアの人々の間だけではなくて、ほぼ全世界の人達に共通した行為になりつつある事を主張して来た。これが私だけの思い込みでは困るので、客観的な事実である事を示すために、同じ調査においてこれに関する質問をしてみたところ、ここまで述べて来たように、シンガポールの若者も同様の見方をしていることがわかった。

私はこのような流れを、「欧米のアジア化」と呼んでいる。この事はどういう事を示しているだろうか。上にも述べたように、ビジネス面ではアジアなど欧米以外の諸国が急速に欧米化するという状況が生じている。そしてこの流れが、一般的にいわれるグローバリゼーションである。ところが人々の日常生活レベルでは、それとは逆の流れである欧米のアジア化が生じているということが私が主張したい事である。もしグローバリゼーションの本来の意味が世界の文化が相互に影響を与えあい、人々の行為・考え方などがいわばそのいい所取りをして高いレベルで共通化の方向に向かうことであるとすると、欧米のアジア化の動きは真の意味でのグローバリゼーションの動きが始まりつつある事を示していないだろうか。

少し抽象的な言い方になったが、シンガポールの若者はこのような意見をどうとらえるだろうか。そのために、27名の対象者に対して以下のような質問をしてみた。

・あなたは「欧米のアジア化」という動きが生じていると思うか。
・もしそうならそれはどのような所に現れているか。
・この動きはいつまで続くだろうか。

これらの質問に対して以下のようなアンケート集計結果が得られた。


1.あなたは「欧米のアジア化」という動きが生じていると思うか。
はい:     27
いいえ:     0
なんともいえない:0


なんと全員がそう思うと答えている。もちろんこれは、この質問に至るまでの私の質問が誘導質問的である事も影響しているかもしれない。しかし少なくとも、彼等が無意識に思っていた事が私の質問によって意識にのぼったため、このような回答が出て来たと考える事は間違っていないだろう。


2.もしそうならそれはどのような所に現れているか。
ソーシアルネットワークが世界規模で普及:7
欧米人の行動がアジア人的になりつつある:6
アジアの食・ファッションに対する嗜好: 5
中国の影響の増大:           4
アジアの精神文化に対する嗜好:     3
厳格なモラルの力の弱体化:       2


興味深いのは、FacebookTwitterなどのソーシアルネットワークが世界規模で急速に普及している事が欧米のアジア化の証拠の第一の者として挙げられている事である。私のブログでも何度も主張して来たが、TwitterFacebookによるコミュニケーションは実は極めてアジア的なコミュニケーションである。そこで取り交わされているメッセージは論理的なものではなくて感情的なものである事が多い。つまり人が他の人とつながっている事を確認するためのメッセージが取り交わされているのである。このことをアジアの若者が直感的にせよわかっているということは大変興味深い事である。

次に多いのは、公の席でメールをチェックしたり、いつでもどこでも写真を撮るというアジア人的行動が欧米の人たちの間にもごく普通の行為として見られるようになったことがあげられている。また日本を初めアジアの諸国の料理やファッションに最近欧米の人々が強い関心を示し始めているという面でも表れているという意見があった。さらに禅やヨガなどのアジアの精神文化に対する関心も高まっているという意見もあった。

また、最近急激に国力を増している中国が影響を欧米に与え始めているという意見や、欧米の人々の行動がアジア化しているのは欧米のキリスト教をベースとした厳格なモラルが最近緩み始めているという意見もあった。


3.この動きはいつまで続くだろうか。
この動きは継続する:23
(内訳)将来は世界の文化が共通化する:13
    文化差はあくまで残る:     8
    ある時点で逆のトレンドがおこる:2
わからない:     4


さてそれでは欧米のアジア化という動きは今後も続くのだろうか。続くとすると将来、欧米とアジアの関係はどうなるのだろうか。将来を予測するというのは大変難しい問題であって、私自身もよくわからないのにこのような質問をするのは無茶かもしれない。従ってこれはあくまで参考意見と理解してもらっていいと思われる。とはいいながら、27人中23人がこの動きは今後とも続くだろうと答えている。という事は、私が感じて来た「欧米のアジア化」という流れが、1つの大きな継続的な流れとしてシンガポール若い人たちにもとらえられていると考えて良いのではないだろうか。そしてその半数以上が、将来は欧米とアジアの文化差が少なくなり、欧米人とアジア人の行動様式が同じようになるのではないかとまで感じているというのは大変興味深いのではあるまいか。