シンガポール通信ーグローバル化と欧米化

次に、最近よく叫ばれるグローバル化について質問してみよう。このブログでも何度か書いたように、最近グローバル化の話題がマスコミや本などでしばしば取りあげられている。しかしながら、その大半で論じられるのは、今後の日本にはグローバル化が必要であるというものである。しかしながら私は、その本当の意味があまり議論されていないのではないかと思っている。

そしてそれらの主張の大半は、よく読んでみると欧米の考え方・行動の仕方等をもっと学んで欧米人的になり、彼等とビジネスなどの場面で対等にやりあわなければ、日本の未来はないというものである。いってしまえば、欧米文化をもっと導入すべきという主張なのである。いいかえれば、グローバル化と言いながら、それは欧米化を意味しているのである。

この疑問を私はずっと持っていたので、果たしてシンガポールの若者はこの事をどのようにとらえているのだろうかというのは、大変興味ある問題であった。そこで、以下の点について質問する事とした。

・欧米化とはなにか
シンガポールは欧米化されているだろうか
・あなた自身は欧米化されていると思うか
グローバル化の意味は何だろうか、欧米化との関係は?

これまでのアンケート調査と同様に、回答は自由形式として、集計の段階でいくつかの代表的な答えに集約する事とした。


1.欧米化とは何か
この質問に関しては、全員が欧米化とは欧米特に米国の文化(生活スタイル・考え方・行動様式など)さらには技術を自分の国に取り入れる事であると答えた。この事は、現時点でも新しいものは欧米、特に米国から来ているということを、アジアの若者も十分認識しているという事を示している。


2.シンガポールは欧米化されているか
次に、自分が住んでいるシンガポールが果たして欧米化されているかどうか質問してみた。


欧米化されている              9人
(内訳)行動も欧米化されている             4人
    英語を公用語にしている事が大きい        3人
    欧米の文化・技術が好きで積極的に導入      2人
部分的に欧米化されている         15人
(内訳)欧米化しているのは表面部分だけ         7人
    考え方・行動様式は中国人的           6人
    技術に関わる部分のみ欧米化している       2人
欧米化はされていない            3人
(内訳)生活スタイル、文化もまだまだアジア的      3人


この質問に対しては、部分的にも含めると約9割が、シンガポールは欧米化されていると答えている。やはりシンガポールがアジアにおいては最も進んだ先進国の1つであることから(大体「先進国」という言葉自体「欧米化」されているという意味である)、シンガポールの若者の認識はシンガポールは欧米化された国であるというものである。

しかしながら、「部分的に欧米化されている」という回答の中身を見ると、欧米化されているのは食事・服装さらには最新のメディアの使用などの面であって、考え方・行動様式にはまだまだ色濃くアジア人的なもの、もっというとシンガポールの過半を占めている中国人的なものがある事をシンガポールの若者は認識している事になる。


3.あなた自身は欧米化されていると思うか

さてシンガポールが欧米化されているかという質問の後で、あなた自身は西欧化されているかどうかという質問をぶつけてみた。


欧米化されている              4人
部分的に欧米化されている         12人
(内訳)英語の使用の影響が大               3人
    食事・服装などで影響大              3人
    欧米文化・技術があふれており影響される      4人
    考え方もある程度欧米化された           2人)
欧米化はされていない           11人


さすがに、完全に欧米化されていると答えた人は4人と少ない。しかも4人のうち2人は欧米出身者なので、アジア人で自分が欧米化されていると答えた人は2人のみという事になる。そして「部分的に欧米化されている」と答えた人(12人)と「欧米化していない」とが数の上でほぼ拮抗している

別の見方をすると、「部分的に欧米化されている」と答えた人たちは、自分も欧米人のような考え方・行動様式を持ちたいのであるが、それはまだ部分的にしか実現されていないという、ある意味での欧米に対する憧れを持っている人たちという事が出来る。それに対して「欧米化されていない」という人たちは、欧米文化の魅力を十分知りながらもやはり自分の生まれた国の文化を守りたいと考えている、いうならばアジア文化守護派に属する人たちだという事が出来る。このようなニュアンスの部分になると単に回答を整理しているだけでは伝わってこない。私が彼等と直接インタビューした中で感じ取ったことである。


4.グローバル化の意味はなんだろう、欧米化との関係は?
さて最後に最も聞きたかったグローバル化の意味を聞いてみよう。


理想は各文化の融合だが、現実には欧米化を意味する  20人
理想は各文化の融合、現実は何とも言えない       4人
現実にもアジアの影響が強くなりつつある        3人


ここで重要なのはほぼ全員が、グローバル化のあるべき姿は、単に欧米文化がアジアなどの他の国々に入って行く事ではなくて各文化が相互に影響し合い、新しい考え方・価値感などが生まれる事であるという理想論を十分認識している事である。
しかしながらそのような理想論を知った上で、現実にグローバル化が意味しているのは欧米の文化・技術を導入することであると3/4の人が認識している。私が考えてきたのと同様の考え方をシンガポールの若者もしているのである。

と同時にグローバル化はすでに単なる欧米化ではないと感じている人たちもいる。4人の人は、グローバル化が単なる欧米化を意味するものではなくなりつつあるが、その動きはまだあまり明確ではないと感じている。そして3人の人が明確に今後は中国の力が増すから、グローバル化は単なる欧米化ではなくて中国の価値観・考え方が世界に広まる事であると感じている。