シンガポール通信ーシンガポールではメディアはどう使われているか3

次にそれぞれのコミュニケーションメディアに関して、何人程度の人がどの程度の時間使っているかという観点から見てみよう。そうすると、単にそれぞれのコミュニケーションメディアを使っているか否かという質問に対する回答とは異なった面が見えて来る。それぞれのメディアの使用人数、平均の使用時間は以下の通りである。


メール 使用人数:27名、平均使用時間:3.4時間
チャット 使用人数:8名、平均使用時間:2.5時間
ブログ 使用人数:1名、平均使用時間:1時間
Twitter 使用人数:9名、平均使用時間:0.8時間
Facebook 使用人数:20名、平均使用時間:1.3時間


また、メール、チャット、TwitterFacebookに関して、使用時間の分布の状況をグラフにして以下に示した。






メールはさすがに全員が「実際に」使っている。使用時間の分布を見ると、1−3時間に集中しているようであるが、4時間以上使用している人も7名おり、平均の使用時間は3.4時間とコミュニケーションメディアの中では最も使われている事がわかる。また、また研究者や事務職の人の間で、使用時間の分布に大きな違いがある訳ではない。ということはやはり現在の所、メールがコミュニケーションメディアの中では最も広くかつ頻繁に使われているメディアである事がわかる。これは、メールがパソコンやスマートフォンで共通に使うことのできるコミュニケーションメディアであるからであろう。スマートフォンを持っている人のほぼ全員が、会社ではパソコンで、それ以外ではスマートフォンでメールをチェックしていると答えた。多分この状況は日本も同様であろうと思われる。

次にチャットは、26名が使っていると答えたにもかかわらず、使用時間を聞くと実際に毎日のように使っているユーザの数は8名と全体の約1/3に過ぎない事がわかる。テキストによるリアルタイムのコミュニケーションというのは、家族や親しい友人などの極めて親密な関係にある人の間のコミュニケーションとして成立するものなのかもしれない。私自身、skypegmailのチャット機能を使う事があるが、それはたまたまであったり、skypeによる会話を始める際の相互接続の確認のために使う程度である。実際に聞いてみると、大半のユーザが遠くに居る家族と毎日のようにチャットでコミュニケーションしているとの事であった。特にアジアでは家族間のつながりが強いため、祖国に家族がいる学生や研究者が家族とのコミュニケーションに使っているようである。

ブログは、11人がアカウントを持っていると答えたにもかかわらず、実際に使用しているのは1人であった。ブログはTwitterFacebookに比較するとある程度まとまった長さの文章を書く必要があるし、また何らかのテーマに沿って文章を展開する必要があるので、実際にはそれを毎日のように続けるのはかなりのエネルギーを必要とするものであろう。使用していると答えた1名のユーザは、努力して出来るだけ毎日自分のブログを更新するようにしているとのことであった。

TwitterFacebookは、最近はやりのソーシアルネットワークだけあって広く使われているし、またそれぞれの特徴が出ているようである。特にFacebookはアカウントを持っていると答えた26名のうち20名がほぼ毎日のように使っていると答えている。今や全世界でユーザ数が10億人に達しようかというFacebookは、人々の間の情報交換のプラットフォームとして定着した観がある。ただし使用時間に関しては、中には1日4時間以上というヘビーユーザもいるが、1時間以下および1〜2時間のユーザが大半である。仕事の合間や通勤途中などに時々短時間チェックし、友人などがどうしているのかを確認しているというのが多くのユーザの共通の使い方であろう。

一方Twitterに関しては、アカウントを持っているユーザは20名であるが、実際に毎日のように使っているユーザの数は9名とそれほど多くない。これは、Facebookが自分が行っている日常の何気ない行為を友達などに対して公開する事により、自分の知っている人達やコミュニティの間のつながりを確かめるためのツールになっているのに対し、Twitterは基本的には自分の意見を述べるためのツールだからであろう。その分、Facobookに対してTwitterは敷居が高いのかもしれない。もちろん、Twitterを使って「食事をしているナウ」などのなにげないメッセージを送る人も多いが、それらは最近ではFacebook上でも可能である。したがって、人々の日常の行為を載せるのはFacebookで行い、自分の意見を述べるのはTwitterでという使い分けを人々が始めているのであろう。