シンガポール通信ーシンガポールではメディアはどう使われているか1

このブログでは、何度も最近のコミュニケーションメディア、具体的にはパソコン・携帯電話・スマートフォンiPadや、それらを用いてメール・チャット・ブログさらにはTwitterFacebookなどの形で行われるコミュニケーションに関していろいろと意見を述べて来た。

しかし、実際にどのような形で人々はコミュニケーションをしているのだろうか。いろいろと意見を言うのは良いが、現実に行われているコミュニケーションの状況を知った上での意見かと、私のブログを読んでいる人には言われるかもしれない。その意味では、現実に行われているコミュニケーションの状況を調査する必要があるだろう。

日本での調査はあると思われるが、私が住んでいるシンガポールでそのような調査が行われたとは聞いていない。その意味では、シンガポールでそのような調査を行う事は、日本とシンガポールの比較をするという点においても意味が大きいと思われる。

日本は、携帯電話を使った友人同士の長電話、さらには携帯電話を使ったメールコミュニケションの普及などでは、世界に先んじていたと言えるだろう。しかしあまりにも日本標準の高機能型携帯電話が早く普及したことがかえってスマートフォンの普及の遅れにつながったこともあり、日本におけるコミュニケーションメディアの使い方はガラパゴス化しているなどと言われている。

一方シンガポールは、多くの人種の人たちが混在している国であり、アジアの中の米国的な位置付けを持っているといって良いだろう。そこにおける人々のコミュニケーションメディアの使い方は、世界における標準的なメディアの使い方と考える事も出来る。

コミュニケーションメディアの使い方という意味では、ごく普通の人たちのメディアの使い方を調査すべきかもしれない。しかし今回は、私が勤務している研究所で働いている人たちを対象として調査する事とした。ある意味で、メディアの先進的な使い方をしている人たちを対象とした調査という事になる。これとは別に、一般の人々を対象とした調査を行う必要はあると思われる。しかし、日本人に劣らず新しい物好きの人が多いシンガポールでは、特に若い人たちのコミュニケーション行為は、すでに今回調査対象となった研究機関で働いている人たちと似ていると予想していいと私は思っている。

(調査対象の人たち)

今回は、私が勤務している研究所(インタラクティブディジタルメディア研究所)の研究者・学生・事務員、計27名を対象として、あらかじめ質問表を配布した上で、面談形式で彼等が種々のメディアを使って行っているコミュニケーションの方法に関する調査を行った。調査対象になってもらった人たちの国籍は以下の通りである。

スリランカ:7名、中国:3名、日本:3名、マレーシア:3名、シンガポール:2名、イラン:2名、カナダ:1名、米国:1名、ミャンマー:1名、インド:1名、スペイン:1名、フィリピン:1名、韓国:1名。

スリランカ人が多いのは、研究所設立の初期に雇ったスリランカ出身の研究者の紹介で、スリランカから来ている博士課程の学生が多いためである。そのような片寄りを除けば、アジアの国々をほぼ平等にまんべんなく網羅していると言っていいであろう。また少数ではあるが、北米・欧州出身者も調査対象になっているため、グローバルな人選になっているといえるのではないか。アジアの国々やさらには欧米の人たちが混在しているシンガポールらしいといえるのではないだろうか。年齢に関しては以下の通りである。

20代:15名、30代:10名、40台:1名、50台:1名。

20台・30台を中心とした若手中心の年齢構成になっている。少し片寄っていると指摘されるかもしれないが、今回は先進的なコミュニケーションメディアの使い方をしていると考えられる若手を中心とした人たちを対象とした調査とした。若手のコミュニケーションメディアの先進的な使い方を知り、またそれをベースとして今後を占う材料にしようと考えたためである。

今回の調査では、研究者・学生・事務員の間の区別はしなかった。インタビュー結果を見たところでは、それらのグループ間に大きなコミュニケーション行為の違いがあるとは見られなかったからである。また国籍の違いに関しても、それぞれの国に属する人数が少ない事もあり、国別の分析は行わなかった。ただ、国籍によるコミュニケーション行為の違いの傾向も見られるように思われるので、それは分析を行う際にコメントという形で付け加える事にしよう。

(続く)