シンガポール通信ー祇園祭と白楽天山2

前回も書いたように、マンションの完成により、一挙に100世帯以上の住民が白楽天町の住民として加わった事になる。これは、白楽天町の町内会としてはある意味では歓迎であるが、別の意味では迷惑な事なのかもしれない。

町内会に出席して説明を聞いたところでは、白楽天町は本来100世帯近くが住んでいたのであるが、近年その人たちが賃貸マンションや駐車場の地主となり、いわば名目だけの住人になってしまっているとの事である。そして実際に白楽天町に住んでいるのは、たかだか30世帯程度らしい。

そして最近の例に漏れず、ここでも高齢化が進んでいるようである。その意味では、マンションの住民100世帯以上が新しく白楽天町の住民として加わった事は、住民の数が増えると共に若返る事も意味しており、その点では町内会としては歓迎であろう。

しかし一方、白楽天という祇園祭のための山を保存・維持して来た立場としては、白楽天山の歴史に関する知識、いやもっというと祇園祭そのものに関する知識をほとんど持たない世帯がどっと白楽天町に移入してくる事は、ある意味迷惑でもあろう。

祇園祭は山鉾の巡行が中心行事であり、観光客はこれのみが祇園祭と思っている人が大半であろう。しかしながら実は、7月1日に始まり7月30日に終わる一か月にわたる行事なのである。そしてその多くは、観光客の目に触れない地味な行事でもある。

どっと入って来た100世帯以上のいわば新入りが、例えば山鉾巡行に参加することだけを希望し、他の行事には全く興味を示してくれないとなると、町内会としては困る訳である。また、観光客の来る宵宵山宵山山鉾巡行の主行事の際などに、新入りの住民が観光客にサービスする立場を忘れて、内部の人間なのに観光客として振る舞ってもらっても困るだろう。

ということで、いろいろ考えたのだろうと思われるが、町内会の立場としての解は、町内会の会員と白楽天山の保存会の会員を分離して考えようという事であった。具体的には、 町内会の会員としては、新入りのマンションの世帯も、それぞれの世帯がこれまでの世帯と同様に一世帯一会員の資格を持つということを認める。

しかしながら、白楽天保存会の会員としては、100世帯以上のマンションの住民をまとめて一会員としようという事である。これだけだと、マンションの住民からすると極めて不公平だと不満が出そうである。しかしながら実は、白楽天町保存会の会員となるには入会金が50万円必要なのである。したがって、マンションの住民にとっては、マンション全体として一会員だという事は、負担金は50万円を世帯数で割った金額になる。具体的には100世帯とすると各世帯の負担金は5000円ということになる。

もちろん、マンション全体で一会員という事は、住民のそれぞれにとっては、祇園祭に参加する資格は実質的には持てない事となる。そこで、町内会の提案する解としては、もっと祇園祭に積極的に参加したい世帯は、50万円の入会金を支払って正式の会員となってほしいという事であった。

なるほど、なかなかリーズナブルな解である。一緒に出席していた約30世帯のマンションの住民も納得していたようであった。

さてそこで問題は、私としてはどうすべきかということである。もちろん祇園祭に祭りの主催者側として参加できるというのは、私にとっては何とも魅力的である。しかし50万円の入会金はもちろん痛い。そして50万円支払っても、シンガポールに住んでいる身としては、どの程度祇園祭に主体的に参加できるだろうかという恐れもある。

ということで、今回は様子見をしてみようという事にしている。少なくとも宵宵山宵山山鉾巡行の間は帰国して、少し詳細に祇園祭の各行事の進行具合を観察してみよう。そして果たして50万の入会金を払って正式の会員になったら具体的にどのような形で祇園祭に参加できるのかを見てみようというわけである。今回の祇園祭の様子に関してはまた、山鉾巡行が終わり次第、このブログで報告したい。