シンガポール通信ー祇園祭と白楽天山

今年も祇園祭が近づいて来た。今年は7月17日が山鉾巡行の日で、それをクライマックスとして、ほぼ一ヶ月間の間京都は祇園祭一色になる。山鉾巡行に向けて、15日が宵宵山16日が宵山なので、なんとか15日の宵宵山には間に合うよう帰国したいものだと、今から予定を考えている。

今回の祇園祭は、私にとっては少し特別の祭りとなる予定である。学生時代の6年間を京都で過ごしたけれども、祇園祭は大学の休みと重なっていたこともあり、祇園祭の時期はほとんど帰省していた。そのためあまり祇園祭の記憶というのがない。

そういえば、8月16日の五山送り火も、実はまだ本物は見た事がない。大学時代6年間京都に暮らし、その後の長い間の東京暮らしの後、再び京都に戻って来てからもう15年以上になるが、まだ五山送り火を見た事がないというのもおかしなものである。

もちろん、この15年以上の京都暮らしの最後の3年間は、仕事の拠点はシンガポールに移ったのだけれども、毎月1度は帰国しているので、私自身としては京都暮らしを継続しているという気分である。

とはいいながら、ごく最近までは千本通り沿いの賃貸のマンション暮らしであった。賃貸マンション暮らしというのも、これはこれで結構気楽で良いものであるし、千本通りの庶民的な雰囲気も私自身は結構気に入っていた。とはいいながら、やはり仮住まいという感覚が続いていた。

そろそろ定着した暮らしをするかということで、今年の始めにマンションを購入した。いろいろと探したのだけれども、そのなかに下京区楽天町のマンションというのが目に留まった。白楽天というからには祇園祭の山の一つである白楽天山のある町ではないだろうか。マンションの広告を読んでみると、なんと祇園祭の際には白楽天の山がマンションのすぐ前に立つとの事である。

思わず心が動いてしまって、他のマンションは放っておいてこのマンションを購入する事とした。購入するからには、できるだけ山が立つ近くの部屋にしたいものである。多分そのような部屋は希望者が殺到するだろうから倍率が高いのではと心配していたのであるが、意外にもすんなりと山が立つすぐ前の部屋を購入する事ができた。

多分他の購入希望の人たちは目の前に山が立つと、祇園祭の間中多くの観光や夜店で生活のリズムが狂う事を嫌ったのかもしれない。また、祇園祭を見たいという親戚や知り合いを泊める事になるのを嫌ったのかもしれない。

しかし、京都の町に長年住んでいながら、ずっとよそ者のような気がしていた私としては、これをきっかけにして京都の町と少し深い付き合いができるのではと期待をしている訳である。

幸いな事に、白楽天山の説明会を行うという町内会が前回私の帰国中に開催されたので、参加してみた。マンションの住民も30世帯ほどの人たちが物珍しそうに参加している。白楽天山の巡行に参加できたらとでも期待しているのであろう。実は私も同様の気持ちであった。

町内会長の説明によると白楽天町の町内会を構成しているのは本来100世帯近くなのであるが、最近は自宅を引き払って賃貸マンションや駐車場にしている例が多く、実際に町内に住んでいるのは30世帯程度だとの事である。

これだけの世帯で白楽天山を維持しているのだから、それは大変だろう。そこに今回のマンションの住民100世帯以上が白楽天町の住民として加わったのであるから、町内会としては一方では歓迎であろう。とはいいながら、新入りの世帯があまり多くなることは、伝統の維持という意味からは望ましくはないのかもしれない。町内会長の説明の際にも、この両方の気持ちが入り交じっている事が、こちらにも伝わって来た。


楽天山の巡行の様子。http://www.kyoto-meguri.com/hakurakuten.htmlの写真を使わせて頂きました。



これもhttp://www.kyoto-meguri.com/hakurakuten.htmlの写真を使わせて頂きました。前懸は、トロイア城陥落を描いた16世紀の毛綴(タペストリー)だとのこと。中国の故事とギリシャの故事が一緒にされているというのは、ミスマッチの興というべきか、東西の文化の融合というべきか。