シンガポール通信ー旅とゲームとiPad
ところで、iPadでファイナル・ファンタジーIII(FF3)を始めた事を書いたけれども、今回はその続きである。
調べてみると、ロール・プレイング・ゲーム(RPG)に夢中になったのはもう20年ないしはそれ以上昔の事である。当初はドラゴンクエスト、通称ドラクエのシリーズを任天堂のファミコン(FC)で、そして次にスーパーファミコン(SFC)で楽しんだものである。そして、ほぼ並行してシリーズものとして発売されていたファイナル・ファンタジーをスーパーファミコンで楽しんだ記憶がある。
どの段階でロール・プレイング・ゲームから離れたのだろう。多分これらのRPGが動作するゲームマシンが任天堂のスーパーファミコンからソニーのプレイステーション(PS)に移った時点だと思う。調べてみると、これらのRPGのスーパーファミコンでの最後のシリーズの発売は、ドラクエVIが1995年であり、ファイナル・ファンタジーVIが1994年である。
その後数年して、いずれの作品もプレイステーションで動作する新シリーズが発売されている。私は結局プレイステーションは買わなかった。あれだけゲームに夢中になっていたのになぜだろう。特に理由は思いつかないけれども、多分ゲーム専用マシンがどんどん高速化・高度化することに疑問をもったのではないだろうか。
たかが、ゲームではないか、そのためのゲームマシンがそれほど進化する必要があるのだろうかという疑問から、ゲームマシンからそしてゲームそのものから離れて行ったのではないだろうか。かっこよくいうと、無意識にではあるがそのとき既にいわゆるヘビーゲームの限界を感じていたのだといえなくもない。
そして現在、スマートフォンやiPadさらにはFacebookなどの上で動作するいわゆるカジュアルゲームが全盛を迎えようとしている。それらのゲームの多くは、無料もしくは従来のゲーム専用機用のゲームソフトに比較すると極めて安い価格で手に入れる事ができる。
これらのゲームは、従来の重厚長大なゲームハード・ソフト市場の構造やビジネスモデルを変えつつあるといえるだろう。そうすると、高価なゲームソフト・ハードの開発・販売でビジネスを行って来たゲーム企業はどうなるのだろう。もしかしたら、任天堂が再び一部の人のニーズに合わせたエンタテインメントを提供する京都の町企業に逆戻りする可能性もある訳である。
という意味では、これらの安価なカジュアルゲーム用ソフトに対抗するため、すでに人々から受け入れられた実績のあるドラクエやファイナル・ファンタジーを、スマートフォンやiPadに移植するというのは現時点での1つの戦略だろう。
ともかくも、私もiPadは買ってみたものの使い道がなくて困っていた事もあり、iPad用にFF3が発売されたというので、購入してしばらくぶりにRPGをやり始めてみたわけである。さすがに昔のように、週末はずっとゲームをしているというほど夢中になる事はできない。読書の方が面白く感じられるため、読書の合間にゲームをするという程度の夢中になり方である。
ところが、旅行にiPadを持って行くと、旅行の間の時間つぶしにRPGがよく合うのである。空港での待ち時間や飛行機の中で過ごす時間に必要なエンタテインメントのレベルと、RPGがぴったり合っていると言えば良いだろうか。
誰も経験あるだろうけれども、飛行機の中での10時間やそれ以上というのは肉体的にも精神的には大変負担のかかるものである。最初は読書などをしていても、すぐに耐えられなくなって来て映画などを見る事になる。そしてそのうちに眠ってしまうというのが通常のパターンではないだろうか。
ところがRPGは、それほどエネルギーを必要とせず(もちろんボスと戦う場合はそうではないが)、しかも適切なレベルの期待感と緊張感を与えてくれる。見たい映画と同等のエンタテインメント感を与えてくれるといったらいいだろうか。
しかも映画のメニューというのは航空会社によって異なるけれども、たかだか数十程度である。その中で見たい映画というのはまあ3、4もあれば良い方だろう。ということは10時間以上の飛行をすると、見たい映画は全部見てしまう訳である。
頻繁に飛行機を利用する人は、すぐに見たい映画はすべて視聴済という事になってしまう。そのような場合に、iPad上でのRPGを楽しむというのはなかなかうまい時間のつぶし方ではないだろうか。もちろん他のゲームでも良いけれども、ある程度長時間の飛行中はPRGなどのストーリー的に継続性のあるゲームが適していると思われるがどんなものだろうか。