シンガポール通信ー地震と津波警報

震災や原発問題に対する管政権の対応に対する風当たりが強い。新聞や雑誌などを見ていると、マスコミ側の批評はほぼ酷評といっていいだろう。いわく「何も決断しない」「震災対策会議を乱立させ機能させていない」「原発問題の最中に現場視察を行い対応を遅らせた」などなどである。

確かに基本的にはその通りだろう。震災対応は別にしても、現内閣になってから何が決まったのだろうと考えてもあまり頭に浮かんでこない。むしろ前の鳩山政権の子供手当、高速道路無料化などのばらまき政策を揺り戻した政策をとった程度の事しか思い浮かばない。

しかし震災対応やその後の原発問題対応を見ていると、あまりにも現内閣のみを責めても仕方がないという面もあるのではないだろうか。それは今回の地震が予想を超えた規模であった事である。

今回の地震がこれまでの予想の範囲を超えた規模のものであったなどと閣僚や関係者がいうとマスコミ等から袋だたきにあっているのが現状であり、「本来このような災害に対応すべきところが十分できなかった」などと低姿勢の物言いに終始しているようである。しかし結局言っている事は同じである。

基本的には、誰も今回のようなマグニチュード9.0という規模の地震は予測できなかったのではないだろうか。現に以前からいわれている東海大地震も震度8.0クラスが考慮されている。「今後はこのような大きな地震の発生の可能性も検討する必要がある」などの発言も聞くが、現実問題としてどこまで規模の大きさを検討するかは困難な問題であろう。

むしろ実際に地震が生じた場合にどう対応するかを、普段から検討しておく事の方がよほど大切ではなかろうか。今回の地震で特徴的なのは、最初の地震での被害に比較してその後の津波の被害が格段に大きい事である。

地震発生直後に各地で津波警報が出て、至急高台に避難すべきアナウンスがなされたのだろうか。もしそれが確実に行われていたら、もっと多くの人が助かっていたのではないだろうか。津波の多くのビデオ映像がYouTubeなどにのっているが、撮影している本人にはあまり緊張感が感じられないような気がする。ビデオの多くが、津波が来るかもしれないから撮影しておこうか程度の気持ちで撮影しているように感じられる、というのは言い過ぎだろうか。

という事は、あのような規模の津波を予想できなかったという事ではないだろうか。各地に設けられた震度計などから震源とその規模は瞬時にある程度推測され、そしてそれに伴う津波の大きさも予想できたのではあるまいか。そしてそれを基にした上記のような津波警報が出されるべきだったのではないか。

地震発生から津波襲来までは数十分ほどの時間があったはずである。なぜ適切な避難警報が出されたかったのかという事こそが検討すべき事なのではないか。避難警報が出されたのに人々の多くがたいしたことはないと思いその指示に従わなかったのだろうかということは考えられないのではないか。

東北新幹線に関しては、今回の地震で線路や建物には被害が出ながら、人的被害がなかった事は特筆すべきかもしれない。聞くところによると、路線に沿って設けられた地震計がネットワークでつながれ、全体のシステムが地震発生と同時にそれを感知して新幹線列車を止めたとのことである。東北地方の沿岸沿いに設置されているはずである地震計でどうして同様の事ができなかったのだろうか。

再度言うと、考えうるすべての規模の天災が生じた場合にでも、それを食い止める完全な対応策を検討する事は現実的ではない。それよりも天災が生じた際にいかに被害を最小に食い止めるかを検討しておく事が必要であろう。

こちらのテレビを見ていると、地震・ハリケーンなどの大規模災害が生じた場合にいかに対応するかをドラマ作りで見せる番組を放映している(米国の番組の輸入品であるが)。昨日の番組を見ていると、なんと核爆発があった際にどう対応すべきかという内容を放映していた。しかも爆心地から数キロの場合、10キロ程度離れている場合など、いくつかのシナリオに沿ったドラマ作りをしていることに驚かされた。それに対して私たちは、核爆発のような事態が生じる事は最初から想定外と考えていないだろうか。