シンガポール通信ーまた京大での国際会議の話題

再び国際会議の話題。何度も国際会議の話題をこのブログで取り上げているので、またかと思われる方もいらっしゃるかもしれないが、これも私の仕事の一つなので、紹介させてもらう。

1月18日〜20日に京大でC5という国際会議が開催され、パネルの司会役として参加して来た。C5の正式名はConference on Creating, Connecting and Collaborating through Computingという少し長たらしい名前である。

この会議はパーソナルコンピュータのコンセプトの提唱者として有名なアラン・ケイが約10年前に提唱して立ち上げた国際会議である。アラン・ケイらしくある意味で現在を予測したようなうまいネーミングになっている。

アラン・ケイは亡くなられた京大の上林先生と親しかった事もあり、京大と縁が深く現在も客員教授を務めている関係で、今回この会議を京大で行う事になったとの事である。「パソコンの父」と呼ばれているアラン・ケイに会える事を期待して参加したのであるが、残念ながら、彼は急用があるとの事で会う事は出来なかった。

しかし今回は別の意味で懐かしい知人に会う事が出来た。ケン・パーリンとマーク・カバッザの2人である。ケンはニューヨーク大学のメディア関係の研究所の所長を20年以上にわたって務めている。インタラクティブなCGキャラクタの研究の草分け的存在で、CGの国際会議であるSIGGRAPHでは毎度おなじみの著名人である。

私が彼に最初に出会ったのは、私がATRに勤務していてSIGGRAPHに参加し始めた1995年頃だからもう15年以上の昔になる。当時から既に彼はSIGGRAPHでは著名人であったが、お茶目な面を持っており、スピーチなどでは人々を笑いの渦に巻き込むことが得意であった。

さすがに少し子供っぽい陽気な風貌をしたケンの顔も15年経つと少し風格が出て来たが、とはいえ昔からの茶目っ気はまだ備えており、ディナーなどでは彼を中心に大変話が盛り上がる種類の人物である。


パネルでのケン・パーリン


一方マークは、「ディジタルストーリーテリング」というコンピュータでストーリーを生成する技術に関する世界的な大家である。実は私が主催しているエンタテインメントに関する国際レベルでの委員会の英国代表のメンバーなのであるが、どうもマネジメント関係の議論や調整は好きでないようで、なかなか会合に出てこない。

というわけでマークに会うのも久しぶりである。英国に住んでいるが生まれはフランスであり、フランス人的なウィットの持ち主である。同時に日本文化に関しても大変博学である。彼と話していると、すぐに日本の文化、しかも源氏物語を始めとする平安文化、道元などの日本仏教、さらには武蔵の五輪の書などが話題に出て来て返答に四苦八苦する事もある。


パネルでのマーク・カバッザ


ケンとマークとはコンピュータと文化に関するパネルで私が司会、彼等がパネリストとして参加した。コンピュータと文化に関する話題はこのところ京大の土佐先生が大変熱心に推進しておられ昨年から何度か国際会議の場でのパネルやワークショップを開催しているが、今回はコンピュータサイエンス関係の研究者の集まる場でこの話を議論してみようという訳である。