シンガポール通信ーゲイラン訪問

音声処理技術関係の国際会議がシンガポールで開催されるため、NTT時代の同僚が二人国際会議参加のためシンガポールに来るというメールをもらった。NTT時代に一緒に仕事をした仲間達である。

といっても、もう二人ともNTTは退職して大学の先生をしている。一人は河原英紀先生。音声の符号化では世界的な研究者であり、現在和歌山大学の教授である。もう一人は中嶌信弥先生。現在主流の音声合成の技術を世界に先駆けて開発した研究者で、現在国士舘大学の教授である。

久しぶりだから会って飲もうという事になって、中嶌先生の宿泊しているホテルで落ち合ってシンガポールの町に繰り出そうという事になった。

ホテルの場所をgoogle mapで調べてみるとなんとゲイランである。ゲイランは知る人ぞ知るシンガポールの歓楽街、もっと端的にいうと遊郭もしくは政府公認の娼婦街である。日本で言うと、かっての京都の島原、東京の吉原に相当する。

かっては多くの国で政府公認の娼婦街というのが存在したが、現在ではその多くは非合法となっている。もっとも日本では大阪の飛田新地アムステルダムの有名な飾り窓などは実質的には娼婦街なのであるが、表向きは非合法という事になっている。

その意味でいうと、ゲイランの存在は何でも政府が規制したがるシンガポールならではといえる。一度言ってみようと思っていたが、なかなか機会がなかった。友人に会うためにゲイランに行くというのはなんとも奇妙ではあるが、良い機会なので訪れる事にした。

もっとも友人の先生の方は、そのような事は知らずに予約してしまったらしい。確かに値段だけを考えるとゲイランのホテルは安い。もっともそれはいわゆる連れ込み宿的な役割をしているホテルが多いからだろう。

さて、タクシーで現地を訪れたが、期待に反して、なんと言う事はない普通の飲屋街、下町の食堂街の雰囲気である。大阪の飛田新地アムステルダムの飾り窓のような怪しげな雰囲気を期待していたので、少しがっかりするほど普通の町並みである。


ゲイランの町並み。シンガポールに良くある下町の飲食街のような雰囲気。



同じくゲイランの町並み。


もっとも後で聞いた所によると、以前はずらりと娼婦が並んでいる、いわゆる怪しげな雰囲気の通りもあったとのことであるが、政府が規制を強くして娼婦が直接客を捕まえるのを禁止したため、そのような風景が消えてしまったという事である。

さて、ホテルで河原先生、中嶌先生と落ち合ったわけであるが、中嶌先生は3人学生を同伴している。しかもそのうちの一人は女性である。うら若い女性の学生を娼婦街のホテルに泊めたりはしないものであるが、 知らなかったのであるから仕方がないだろう。

もっともくだんの学生さんはあっけらかんとしており、「ヘーこれが娼婦街ですか、なんだか普通ですね」などとくったくがない。まあ政府公認という事は安全という事でもあるから、問題がないと言えばないのかもしれない。

さてその後はシンガポールの中心街にタクシーで出かけ、飲み食いをした訳であるが、やはり20代の学生3人と50代後半から60代の大学の先生が飲み食いしていると、学生達3人と先生3人に会話の輪が分かれてしまう。まあこれだけ年代に差があれば仕方がないのかもしれないが、少々残念ではあった。


皆で一緒に記念写真。左から河原先生、私、 中嶌先生。右の3人は中嶌先生の学生さん。