シンガポール通信ーシンガポールと蘇州市の経済協力

昨日(7月8日)、シンガポールと中国蘇州市の経済協力関係樹立に関するセレモニーに出席して来たので、その報告。

シンガポールはこれまでも蘇州(Suzhou)と種々の経済協力関係を持って来たが、蘇州が企業や大学の集積したインダストリアルパークの拡大に今後力を入れるため、さらに協力関係を強化するための発表と調印のセレモニーである。


Suzhou Industrial Park


蘇州と言えば、「上海、蘇州と汽車に乗り、太湖のほとり無錫の街へ」の歌詞で有名な無錫旅情に歌われた蘇州ではないか。地図で見ると蘇州は上海に近い都市で、無錫はその近くにある小さな街である。大ヒットしたこの歌は私も一時カラオケでよく歌ったもので、蘇州と無錫の名前は私の頭に刻み込まれている。Suzhouと聞いても蘇州の名前がすぐに浮かんでこないところが私たち日本人には残念なところであるが、地図を見ると一目瞭然である。

このセレモニーに先立って、6日にインダストリアルパークにある大学(東南大学)の学部長が、大学と私の研究所(IDMI)の間でも研究協力関係を樹立したいとの事で、表敬訪問にIDMIを訪れた。相互にそれぞれの研究組織の紹介をした後でIDMIの見学をしてもらった。


東南大学の学部長との記念撮影、中央の女性が通訳、その右隣が学部長


先方の大学紹介で印象に残ったのは、ともかく施設に金を投資している事である。IDMIに関連する研究分野に関しては、大がかりな3次元のバーチャルリアリティ施設や、モーションキャプチャシステムなど、大学ではあまり見かけられないような施設を用意している。

もう1つは先方の学部長が英語を話せない事である。専属の通訳がつきっきりで相互の通訳を行う。研究分野では英語が世界共通語になって久しいが、まだまだ中国では英語の話せない先生が多い。若い人はそのようなことはないが、学部長以上のいわゆる偉い人にはそのような人が多いようである。

その後, NUS側からも渉外部門の部長などを招待して昼食会という事になったのであるが、どうしてもすぐ会話が中国語になってしまう。シンガポールでは公用語は英語であるが、中国系の人が多い事もあり、中国語は准公用語的な位置付けである。欧米人や私のような人間を除くとほぼすべての人が中国語も話せる。当初は通訳が会話の内容を通訳してくれるが、そのうちに通訳も会話の輪に入ってしまう。

中国の力が大きくなり中国との関連が重要になってくることを考えると、これからはある程度中国語を話す能力を持っている事が必要なのかもしれないなどという事を考えさせられた。

さて昨日のセレモニーであるが、これがまた大変大がかりなものである。シャングリラホテルの1000人は入ろうかという会場がシンガポール側、中国側の出席者でほぼ一杯である。それはいいとして、セレモニーの最初に中国側の代表者の紹介に30分近くがかけられる。しかもその後両国の代表者の挨拶が延々と1時間以上続くのにはさすがに参ってしまった。

まあ日本におけるセレモニーでも、最初に主賓などの挨拶が続き飽きてしまうという似たところがあるが、それをずっと大がかりにしたようなものである。しかもその挨拶がみな中国語なので、さらに聞いている側としては疲れてしまう。

上にも述べたようにシンガポール公用語は英語であるが、一皮むけば中国系の人たちが実権を握っており、中国語が通用している社会である事がわかる。

その後、シンガポールと蘇州の関係者による経済協力に関する種々の調印の署名式があるのであるが、これがまた全体で50人近い人が順に署名を行うので、署名式だけでも1時間近い時間が経ってしまう。


延々と続く調印式


その後のディナーに招待されていたのであるが、このセレモニーに出席しているだけで疲れてしまい、ディナーは失礼させてもらった。セレモニー全体としては、なるほどこれが中国風のセレモニーなのかという感想を持った次第である。シンガポールでもまた日本でも、今後中国との関係が重要になる事を考えると、このような中国風のセレモニーにも慣れておく必要があるのだろう。