シンガポール通信ー私の著書の感想1

2月に発売になった私の著書「テクノロジーが変える、コミュニケーションの未来」に関していろいろとコメント・感想などを頂いているので、ブログで少しずつ紹介しながら、返答を書いて行きたい。

引用する事に関し、必ずしもすべての方の了解を得ている訳ではないが、ご本人の名前は出さないようにし、かつご本人を推定できるような記述も引用しないように注意するので、ご了承を頂きたい。頂いたコメント・感想が「ですます調」なので、回答も「ですます調」にしたい。また基本的には、それぞれのブログではお一人のコメント・感想を取り上げる事としたい。


『「悟り」 という表記に惹かれ、第5章が興味深く思えましたので、読み始めたところです。 アートの挿絵にモネを使うところなど、Moneyにかけた洒落ではないか?と思うは考え過ぎでしょうか。』

第5章「コミュニケーションと悟り」の部分で、人が娯楽にはお金を喜んで支払うのにアートの鑑賞に支払う金が少ない事に対して皮肉っぽく触れたりしたので、このような感想を頂いたのだと思います。
なるほど5章の後で3章を読むとそのように読むこともできるのですね。しかし全くモネとマネーの関係は念頭にありませんでした。もっとも無意識レベルでは、そのようなつながりを利用したのかも知れません。なかなか興味深いご指摘ありがとうございました。


『役所のOBの方から、ツイッターを始めたと連絡を受け取りましたが、短い時間であれこれやり取りをするのは仕事だけで沢山!と思っています。静かな部屋で硯に向かい墨を磨ることから始めたいと考えている私には、なかなか馴染めない世界です。』

この本の内容は、私が関西学院大学時代に1、2年生を対象として行った講義をベースとしています。私が関学に移った2002年から徐々に新しい話題を加えながら内容を広げて行きましたが、さすがに最新のコミュニケーション手段であるツイッターは本を書き始めてから始まったサービスであり、詳しく述べる余裕はありませんでした。

ツイッターが今後どの方向に行くかは現時点ではまだ明確ではありませんが、少なくとも自分で始めて見た感覚としては、ある種の新しさと可能性を持ったメディアであると思います。

最も大きな特徴はブログと同じ自己表現の手段だと言う事です。(このことは既にブログでも書きましたのでそちらも参照してください。)メールはコミュニケーションの手段であり、特に最近は、チャットのように相手とのやり取りの時間差がなくなって来ています。そうすると、ゆっくり時間をかけて考えて返答を書くよりともかくすぐに返事を書かなければならないという心理的圧迫を感じます。その結果として、反射運動的に返答を書くという行動様式に落ち入りやすい面があります。その意味で、短い時間でいろいろとやり取りをするというのは最近のメールの特徴だといえます。

対してツイッターはメールのような使い方も出来るとはいえ、基本的には短いつぶやきを発信することにその特徴があります。したがって、自分の考えた事、感じた事を自分の好みのタイミングで発信すれば良いので、使い方によっては優れた自己表現手段になると思います。

そのためには、短いけれど本質をついたメッセージを書く事が必要であり、「今、食事をしている」だけの内容では困る訳です。現在食事をしていることに特有の意味があり、それを他の人に伝えたいという欲求を持つ事が必要です。そのような内容を持ったつぶやきは、読んでいても気持ちが伝わって来たり、なるほどなと感心したりします。そういう使い方をしたいものです。

私自身は、何かを感じそれを表現したいと感じた時、それを短いつぶやきの形にして発信しておき、後で読み返して、適切なものに関してはそれをベースとしてブログを書くという形でツイッターを利用しています。

「静かな部屋で硯に向かい墨を磨ることから始めたい」というのはまさにおっしゃる通りです。コミュニケーションの最も本質的なものは自分自身との対話であり、それを他の人に伝えたいという欲求が自己表現につながるのだと思います。現代人は自分自身との対話の時間が少なくなっており、チャットや最近のメールのような反射運動的なコミュニケーションに時間の大半を割いているという状況が生まれています。大変嘆かわしいことです。ぜひ自分自身との対話を大切にして頂きたいと思います。