シンガポール通信ー文化とコンピュータ1

引き続き、先週末(2009年12月11日〜13日)に京大で行われた「学術研究における映像実践の最前線」と題する国際会議における話題を。

私は、13日に行われたカルチュラル・コンピューティングと題されたセッションで発表した。本セッションの発表者と発表タイトルは以下の通りである。
ヒシャム・ビズリ(ミネソタ大学)「プレリュード」
土佐尚子(京都大学)「日本文化をコンピューティングする意味」
小山田耕二(京都大学)「文化情報を分析するためのビジュアルマイニング環境」
中津良平(NUS)「カルチュラル・コンピューティングにおける西欧と東洋の文化の比較」

土佐尚子先生は文化をコンピュータで扱うという「カルチュラル・コンピューティング」を提唱者であり、最近同名の本をNTT出版より出版された。小山田耕二先生はCGを用いて種々の現象や科学技術計算の結果の可視化の研究を行っておられる。ヒシャム・ビズリ教授はここ10年来の友人である。映画作りに情熱を注いでおり、短編映画が多くのフィルムショーで入選している。

文化をコンピュータで扱おうとするのは始まったばかりの研究領域といえるだろう。具体的に何をすべきかの議論を行っている段階である。しかしながら情報技術(IT)がある段階で文化と関わりを持つのは必然とも言えるので、この分野への関心は高まっていくと思われる。偶然かもしれないが、翌14日には東京で「情報技術を文化へ」と題するシンポジウムが開かれ、長尾真先生(国立国会図書館長)や原島博先生(東京大学名誉教授)による文化と情報技術との講演があった。一旦ある技術分野に関心が集まり始めると、その領域にどっと人々が集まるというのは、よくも悪くも技術研究領域の特徴である。

さて、私自身はまだ文化をどうコンピュータで扱うかに関する考え方が固まっている訳ではないので、上記のタイトルのもとに最近考えていることを話すこととした。私は現在ギリシャ時代の歴史や哲学に興味を持っており、少しずつ本を(といってももちろん日本語への翻訳であるが)読んでいる。そこで「ロゴス」と「パトス」の関係に興味を持つようになってきた。まだまだ固まった考え方ではないが、続きで少し紹介しておく。(続く)