シンガポール通信−オフィス開設に伴う雑感2

さてNTTのショップが無いというのは、ショックはであったが認めざるを得ない。それだけ固定電話の新規開設数が少ないという事だろう。NTTドコモソフトバンクauなどの携帯電話のショップが、街の至る所にしかも街の中心部にあるのに比較すると何とも寂しいものである。

ということで、ネット上にNTT東日本が用意しているオンラインショップを通して電話回線の新規開設の申し込みを行う事となった。問題はこちら側がまだ現時点ではオフィスに常駐者がいないため、開通工事の日にはシンガポールから来て現地に居る必要があるという事である。

先に書いたように、オフィス家具の購入と搬入、電気製品の購入と搬入なども、結局はオフィス家具のショールームや家電量販店に行き目で確かめて購入した方が確実であるし、さらに搬入の際には立ち会う必要がある。当然の事ながらこれらを個別に行っていては効率が悪いので、シンガポールから帰国して東京に滞在する数日のうちにまとめて行う必要がある。

もちろん電話の開設もそれに合わせて行ってもらいたい。このような日程の調整には、やはりネットで行うのは不便であるというのが、今回の手続きを通して得た実感である。オフィス家具の搬入、電気製品の搬入、電話工事の日程を出来るだけ同じ時に調整したいのであるが、やはりこのような場合は電話で先方の担当者と連絡を取りながら決めて行くのが、もっとも確実な方法だと感じた。もちろんメールのやり取りで決める事も出来るが、担当者によってメールの返事が遅い事もあり、調整の同期がとりにくいのである。

あまりNTTの悪口は言いたくないが、オンラインショップを担当している部署(いわゆるコールセンターで行なっているようである)がどうも東北地方にあるようで、メールの返答がいかにものんびりしており遅い。いらいらして電話をかけると、さんざん自動応答で窓口を選択する処理で待たされたあげく、担当者が休暇を取っているのでわからないという返答である。電話対応のやり方が欧米的で融通が利かないことはなはだしい。

担当者が決まっており担当者以外はわからないというのは、欧米の悪しき習慣と言われて来たのではないだろうか。日本では、担当者以外にも情報が共有されており、担当者が不在でも対応してくれるというのが長い間の良き伝統であったのではないか。それがビジネスの仕方においていかにも日本的であると感じさせて来たNTTにおいても崩れてしまっているのである。何とも嘆かわしい事である。

さて、電話の工事はオフィス家具や電気製品の搬入の日とは同期できないということになったので、早めに前回の帰国時に工事をしてもらう事となった。午前10時から12時までの間に工事に行くという事だったので、オフィスで待っていたがまったく連絡がない。仕方がないので上記のコールセンターに電話してみたところ、再び担当者が不在である。待たされたあげくに午前中の予定が午後になったとの連絡である。

やれやれということで、午前の予定と午後のミーティングの予定を入れ替え、ミーティングに出かける事にした。ところがミーティングの途中で工事担当者から電話がかかって来て、今オフィスに着いたが誰もいないとの連絡である。「午前の予定が午後の予定に変更になったと聞いている、一体どうなっているのか」と苦情をいっても、先方はNTTの下請けの工事担当会社なので予定変更の件は聞いていないといっこうに要領を得ない。

これが通信技術で世界をリードして来たNTTの現状なのかと、怒りを通り越して情けなくなってくる。結局最終的には別の工事会社に来てもらい、開通工事を行なってもらったのは夕方の6時近くであった。工事担当の方はNTTの下請けの会社の方で、その方自体はまじめに短時間に仕事をこなしてくれた。下請けの会社の方にNTTに対する苦情を言ってみても仕方がないので、上に書いたNTTの対応がいかにもちぐはぐで遅いことに対する苦情を間接的にいってみると、「最近は電話開通工事が少ないので昔のような迅速丁寧な対応がむつかしくなっている」と大変申しわけなさそうに返答してくれた。

そして最後にもう一つ。これも私の不勉強のいたすところであるが、なんと工事開通時には電話機は用意されないで、こちらで買う必要があるという事を始めて知った。かっては固定電話を申し込むと、NTTが黒電話機を用意してくれたように記憶している。もちろんこれも遠い昔のことだということはできるだろう。

しかしNTTドコモ等の携帯電話ショップでは、携帯電話端末の購入と回線使用契約をまとめて行なってくれるではないか。NTT本体が端末と回線を一体にした商売をしていないというのは、腑に落ちない。NTTはビジネスとしては回線提供に徹するという事かもしれない。しかしそれは、安全なビジネスモデルかも知れないが、同時に将来は先細りのビジネスモデルなのではないだろうか。