シンガポール通信―オフィス開設に伴う雑感

7月10日から20日までの10日間帰国していた。このブログでも書いたが、東京にイベントの企画・実行を行なう会社を設立する準備のためである。その間いろいろと忙しくてブログを書く暇がなかった。これは「リア充」というのだろうか。

さてなんとか会社の登記も終わり、オフィスの場所も確定した。とはいいながら、オフィスを開設するとなると、オフィス家具を購入したり、電話やインターネットの開設を行なったり、また冷蔵庫・掃除機等のオフィスの電気器具を購入する必要がある。これがなかなか大変である。

東京に住んでいると、これらのいわば雑務に対応するのはそれほど大変でもないが、こちらは通常はシンガポールに住んでいる。シンガポールに住みながら別の国(といっても日本なのだけれども)におけるこのような雑務に対応するのが結構大変なのは、当たり前と言えば当たり前であるが、実際にトライしてみて始めて実感した次第である。

まず家具の選定である。最近はオンラインでも家具の購入は出来るが、やはり質感というのオンラインショップではなかなかわからない。オフィス家具でも家庭用の家具でも同じだろうが、家具の価格というのもピンキリである。オフィス家具でもコクヨやウチダなどのいわゆるブランド品とオンラインの格安の家具とでは5倍もしくはそれ以上の価格差がある。

結局それは質の差という事になるので、目で見て確かめるという事が必要になる。オフィスの場所に選んだ南青山周辺には家具ショップは多いので、まずはオフィス周辺の家具ショップを見て回った。しかし青山という事もあるが、家庭用の高級家具が中心で、オフィス家具もいずれも木製高級品である。とてもわれわれのような立ち上げたばかりの会社で購入出来るような品ではない。

という事で次は、コクヨ・プラス等のいわゆるオフィス家具のショールームを見て回った。しかしこれらも、ブランド品という事もあるがいずれも高価である。オフィス用のスチール製の椅子1つが20万円以上するのには、一緒に見て回ったシンガポール人のAdrian Goh(一緒に会社を立ち上げたいわば共同経営者)も、シンガポールの5倍〜10倍すると言ってあきれ顔である。結局某社のショールームで安価な家具を選定する事で落ち着いたが、それでも100万円以上はする高価な買い物になった。

さて次は電話とインターネットであるが、そういえば据え置き型の固定電話というのはいつから購入した事がないだろうか。私自身の記憶でも1980年代までは家に固定電話というのがあったのを覚えているが、1990年代半ばに携帯電話が普及し始めてからはずっと携帯電話を使って来ており、固定電話はオフィスはともかく家からはいつの間にか消えてしまって久しいというのが正直な所である。

携帯電話は各社が多くのショップを構えているので、購入しようとするとこれらのショップに出向けば良い。しかし固定電話はどうするのだろう。かってはNTTのビルには必ず一般の人向けのショップがあったものである。というわけでまずはオフィス近くのNTTのショップを探したのであるが、まったく見つからない。

結局webでNTTのショップを探す事にしたのであるが、なんと驚くべき事にNTT本体は一般向けのショップを持っていないということを今回発見した。時代の移り変わりと言えばそれまでであるし、NTTに勤務していた私が知らなかったというのは自分の不明を恥じるしかないが、NTTに一般向けのショップがないというのは大きなショックであった。

かっては大都市でも地方の都市や街でも、その中心部にはNTTのビルがあるのが当然であり、そしてその中には電話機を売ったり、電話の開通や修理を担当したり、さらには毎月の電話料金を徴収する窓口を持った大きなショップがあるのが当然であった。そしてそれらのショップはいずれもゆったりとしたスペースを有しており、そのためにそれらのショップの多くは地域の人たちが集まって雑談をおこなうサロンの役割もしていたのではないだろうか。

それらが消え去ってしまっているのである。ちなみにネットで「NTT ショップ」で検索すると、そのトップに来るのは「NTTオンラインストア」であり、第2位に来るのは「ドコモショップ」である。時代の変化とは言いながら、なんということだろうかと、私としては慨嘆するしかなかったというのが実際の所である。

(続く)