シンガポール通信−理研の調査結果の報告を信用できますか?

現在シンガポールから帰国途中の機内で書いている。機内はシンガポールからの帰途の日本人観光客や日本へ観光旅行に向かうシンガポール人観光客で満員である。

マレーシア航空機が理由不明の空路変更を行い南インド洋に墜落したと見られているが、その詳細はまだわかっていない。シンガポールの新聞やテレビなどのメディアでは現在もまだ連日のように報道されているが、あまり捜索活動に進展が見られないようで徐々に報道される量は減って来ている。

シンガポールから関空に向かう飛行機は、行方不明になったマレーシア航空機とほぼ平行の空路をとっている。クアラランプールから北京に向かったマレーシア航空機の予定飛行時間も、シンガポール航空機とほぼ同じ程度である。関係無いと言ってしまえばそれまでだが、私などは似たような空路を飛んでいた飛行機が数週間前に行方不明になったという事実には、乗っていてもある種の居心地の悪さと言うか気味悪さを感じてしまう。

しかし満員の機内の乗客は行方不明のマレーシア航空機のことなどは念頭にないようで、シンガポールでの楽しかった観光の思い出に浸ったり、これから向かう日本の観光に思いを馳せているようである。まあべつにそれでいいのだけれども、やはりシンガポール航空機に乗っている私たちも、一つ間違うとマレーシア航空機に乗っていた不運な乗客と同様の運命に出会うかもしれないということは、常に念頭においていた方がいいのではあるまいか。

さて空港のロビーで飛行機に乗るのを待っている間、いつものことながらネットのニュースを見ていた。そうすると、STAP細胞作成に関する不正の有無を調査する理研の調査委員会が、「小保方氏が発表した論文に画像の切り貼りなどの不正があった」という報告を行ったとのニュースがあった。今頃は日本ではテレビを始めとしてメディアはこのニュースで持ち切りであろう。

ネット上のニュース速報であり十分な情報がないので、私が早とちりしている可能性もあるが、このネット上のニュースを見ていると幾つかの疑問や意見が浮かんでくる。

まず一つは、この調査委員会の報告が4月1日つまりエイプリルフールの日に行われている事である。1月にSTAP細胞作成に成功と大々的にメディアに報道を行った理研が、今度は手のひらを返したようにその成果を載せたネイチャー論文は嘘であったと言っている。自分たちが発表した事を短期間に自分で180度ひっくり返しているわけである。こうなると、いずれの発表を信じていいのかわからなくなってしまうではないか。茶化した言い方になってしまうが、この調査委員会報告もエイプリルフールに引っ掛けた嘘でないということをどうすれば信じる事が出来るのだろうか。

まあそのような冗談はおいておくとしても、どうもこの報告にはいくつか納得のいかないものがある。まずは調査報告では二つの不正行為があったと述べれられている件である。二つの不正行為のうち一つは、ネイチャー論文に使われた画像の一部が小保方氏の博士論文に使われた画像(つまりSTAP細胞ではない細胞の画像)を使っていることであると指摘されている。もう一つは遺伝情報の実験画像をオリジナルの画像に加工を加えた物を使っている事であると指摘されている。

これはいずれもすでに他の研究者などに指摘されておりわかっていた事ではないか。新しい事実に関する報告を期待していた私たちとしては、何か肩すかしを食らわされたような気持になるではないか。何が新しくわかった事なのだろうと考えると、結局のところ新しい事実としては、小保方氏にヒアリングをして得られた小保方氏の陳述が新しい事実であると考えざるを得ない。とするなら、小保方氏の陳述に基づいて調査委員会はSTAP論文に不正が存在したと判断したと言う事になる。ところが小保方氏は、この調査委員会の不正があったと断定する報告に大変不満のようで、異議申し立てを行うとのことである。

つまりすでに他の研究者などから指摘されている不適切な項目について、調査委員会は小保方氏に直接ヒアリングする事によりたしかに不正であったと報告しており、小保方氏があたかも不正があった事をヒアリングの際に認めているかのような言い方をしている。ところが一方小保方氏はヒアリングの際は不正はなかったという立場から陳述したものと思われる。同じ陳述内容にもとづいて一方は不正はあったと判断し、他方は不正はなかったと考えている。なんともおかしな状態ではないだろうか。

(続く)