シンガポール通信ー麗水EXPO報告:土佐作品の紹介

麗水EXPOのメインストリートの230m×30mの巨大LEDディスプレイ(EXPO Digital Gallery: EDG)で上映される土佐さんの作品を紹介しておこう。これは、EDGやビッグオーの制作を行った韓国のデザイン会社GLから依頼されて制作した、3分間のアニメーション映像である。

このアニメーション映像は、当初から中国・韓国・日本の長年の歴史や文化的つながりに注目して、いずれの国でも古来から神とされて来た四神(青竜、朱雀、白虎、玄武)や、共通の宗教である仏教、さらには共通の文字である漢字などをモチーフとするのがアイディアであった。

これらのモチーフを用いて、中国・韓国・日本の長い歴史の中での争いやそれを克服した平和と共存、さらにはそれと海洋との関係などをアニメーションで表現しようというのが基本的なコンセプトである。

中国・韓国・日本で共通の文化というとどうしても私達は仏教を考えてしまう。したがって土佐さんの制作した当初の作品は仏教色が少し強く出ており、三十三間堂に見られるような多くの仏像を画面全体に並べた映像が含まれていた。しかしながら、韓国では宗教色が出る事に対して政府も含めて人々が神経質であることから、EXPO委員会から宗教色を弱めてほしいとの依頼があったため、それに対応して仏教色を弱めるような変更を施した。

また背景映像としては、これも中国・韓国・日本に共通する山水画を海洋という、EXPOのテーマと結びつけた水中山水画というアイディアを考えたが、当初の山水画が日本的なものであったため、これもEXPO委員会からの依頼でより韓国的な山水画へと変更した。

最終的には出来上がった作品はEXPO委員会から高く評価され、土佐さんがEXPO委員会から表彰されるということになった。



映像は、韓国の古墳に描かれた四神のイメージから始まる。



次に四神が相争うアニメーションが現れる。これは、中国・韓国・日本に過去にあった不幸な争いを表現している。



次には争いが終わった事を示すため、四神が融合して巨大な竜になるアニメーションが現れる。



次に竜の口から古代の象形文字が現れる。これは漢字文化の生成を意味している。



古代の象形文字は徐々に新しい象形文字へと変形し最後に漢字へと変る。



そして漢字の並びが「般若心経」へと変る。これは漢字文化から智慧、哲学が生まれる事を意味している。



さらに漢字の一文字一文字が十二神将のイメージへと変化する。これは漢字の一文字一文字の中に長い歴史と文化が含まれている事を意味している。



そしてクライマックスでは、十二神将のイメージと炎で表現されたドラゴンのイメージが重なり合う。



そして最後には再び海中山水画のシーンが現れ、海洋と文化が結びついた人類の将来を暗示しながらアニメーションが終わる。