シンガポール通信ー不思議なビルの建て方

私の住んでいるシンガポール国立大学の職員宿舎が現在建て増し中である。日本流に言うと職員宿舎とかアパートとかいう言い方をするけれども、実際にはアパートという感覚よりはもう少し広くてレベルの高い、まあマンションという言い方の方が正しいのだろう。

実際には私の住んでいるのは、2ベッドルーム、書斎、リビングルーム、キッチン、トイレとシャワーが2つづつ、それに狭いけれどもメイド用の部屋も用意してある。日本流に言うと3LDK、メイド用の部屋を入れると4LDKという言い方になるのだろう。風呂がシャワーのみでバスタブがないというのはいかにも常夏の国シンガポールらしい。

いわゆるマンションという言い方は日本だけなので、シンガポール市内から帰宅の際にタクシーの運転手などに説明する時に、どういう言い方をするかで最初は悩んだものである。アパートという言い方はなんとか通用するが、通常はコンドミニアム、略してコンドーというのがこちらでの通常の呼び名のようである。

毎月の賃貸料は日本円で10万円近くするが、同様の物件を近くで借りると日本円で20-30万円はするとの事である。日本と比較しても、これはかなり高いのではないだろうか。ともかくも、狭いシンガポールは最近の好調な経済のせいもあって、住宅の価格は上がりっ放しである。

さて、最初の建て増し中の建物の話に戻ろう。これは、学内に教養学部に特化した新しいキャンパスが現在造成中であり、完成した時に増える教員の住居に使う予定とのことである。ちょうど1年前に造成を始めてある程度建物が出来上がりつつある。

それはいいとして、建築途中の建物を見ると何となく違和感がある。特に注意してみていた訳ではないが、日本のビルの建て方となんだか違うのである。日本だと、まずは鉄筋コンクリートの柱を建て、その柱を中心として床とか壁などを加えて行くという建て方をする。

ところが、こちらでは写真を見てもらうとわかるけれども、まず壁を最初に建てる。そして次にその壁に床などの付属の建築物を追加して行くという建て方をしている。そうして追加した床などの建造物をのばして行き、隣の壁と連結させて行くという建て方なのである。


壁を中心に床などの建造物を追加しつつあるところ。


したがって、最初は垂直方向の壁だけがどーんと立っているという不思議な光景が出現する。そしてその壁に水平方向の床などの建造物が次々と付け加わって行く訳である。見ていると何とも危なっかしい。出来上がった建物は、床などの水平方向の平面を形成している建材と壁などの垂直方向の平面を形成している建材がそれぞれ相互に支え合っているという構造をしている事になる。

多分日本で主流の、鉄筋コンクリートの柱を中心とした建て方に比較して、安上がりで済むのだろう。それにしてもこれは、地震がほとんどないシンガポールならではの作り方ではないだろうか。

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これはかなり出来上がったところ。それにしても中央部の壁だけが立っている部分は大変気になるところである。