シンガポール通信ー台北訪問

先週マイクロソフトが主催するワークショップに参加のため台北を訪問したのでその印象を。

ワークショップはeHeritafeと名付けられ、歴史的遺産をITを使って保存したり再現したりする技術に関する議論を行う場であり、これについては別に報告したい。

台湾は過去数回度訪れたことがある。最初の訪問はもう30年近く昔だろう。まだNTTの研究所にいた時代である。私がゴルフにこっていた時代で、研究所のゴルフ仲間3人と台北市近くのゴルフ場でゴルフをするため何日か台北市内に滞在した。

ゴルフの方はこっていたとはいえまだ初心者の段階で、打ったボールの行方も定まらず、スコアメイクにさんざん苦労した事をおぼえている。しかしもっと鮮明におぼえているのは台北の夜である。

4人のゴルフ仲間は麻雀仲間でもあった(これは偶然というよりそうアレンジしたのであるが)。夕食が終わって、さて麻雀だという事になり夜の街に繰り出した。当時の私たちは麻雀の本場中国ではさぞ街の中に雀荘がひしめいている事であろうと信じて疑わなかった。まだ「地球の歩き方」などの海外旅行者向けガイドブックが普及する以前だったのだろう。

ところが台北の街を1時間以上歩いても雀荘に出会わない。疲れてしまって結局どこか地元のレストランに入りビールを飲んで引き上げた記憶がある。中国では台湾でも本土(中華人民共和国)でも麻雀は基本的には家でするものであり、誰でも出入りできる雀荘という概念がないということは後で知った。

その後中国に出かけたときに、下町や地方で雀卓を外に持ち出し、仲間内で麻雀に興じている風景に何度も出会ったが、雀荘らしきものには結局一度も出会っていない。

さて台北の街であるが、私が最初に訪れた30年前とあまり変わっていないなというのが第一印象である。当時真新しかった台北駅はまだ偉容を誇っているとはいえ、古びた印象を与えるのは否めない。


台北駅、少々古びている


中国の上海や北京が古い町並みを取り壊し新しいビルが立ち並んでいるのに比較すると、新しいビルも少なく、停滞している印象を受けやすい。これはワークショップに参加している他の海外からの参加者に取っても同様の印象であったようで、上海などに比較すると単なる地方都市の印象を受けるという意見が多かった。

しかし、数十年前と比較して町並みがあまり変わっていないということと、街が活発に活動しているかどうかはまた別の問題である。

私は、台北は一国の首都として十分活発に活動しているという印象を受けた。道路は車であふれており(その多くは日本車である)、行き交う人びとの表情は生き生きとしている。また、台北名物の夜市(ナイトマーケット)は何やら妖しげな雰囲気も含めて活気にあふれている。


ナイトマーケット、巨大な夜店市といった感じ


いずれにしても台湾は国が小さい事、気候が温和で日本に似ている事、日本の統治機関が長なった事などがあって、人びとが温和で親しみ深く、雰囲気的にも日本と良く似た国である。しかしながら、中華人民共和国と共通の部分もある。それは壮大な建造物の好きな事である。台湾は小さい国なので、壮大な建物を建てなくてもいいのにと思うが、故宮博物館、中正記念堂など壮大な建物を立てたがるのは中国人の基本的な性格のせいだろうか。

蒋介石を記念した中正記念堂は今回初めて訪れたが、こんな広い土地を使ってもったいないという思いの方が先に来てしまう。それよりも面白かったのは、バスガイドが「皆さんが記念写真をとるためにしばらく休憩します」と言ったことである。本来なら「見学のために」と言うところである。


中正記念堂、ともかく巨大である


いつからこのような言い方になったのだろう。そういえば欧米人もアジア人も記念写真を撮り合っている。私の本でも書いたが、欧米人とアジア人の行動様式が似て来つつあるという一例であろう。