シンガポール通信ーグーグルは有益か
前回に引き続き、グーグルが提供しているいくつかのサービスについて、それが本当に便利で有益なものかどうかを考えてみよう。グーグルのサービスを賛美した発言は山ほどあるので、辛めの書き方をする事を了承して頂きたい。
<グーグルサーチ>
グーグルの代表的なサービスで、インターネット上の膨大な量のウェブページの情報をキーワードによる検索で取得できるようになっている。サーチ機能が十分でなかった時代は、ウェブページからそれにリンクされている他のページをたどる、いわゆるネットサーフィンをする事により関連情報を探したものだが、最近ではネットサーフィンは死語になってしまった。
たしかにサーチは便利である。しかし考えてみると、情報自身はグーグルが用意した訳ではなく、多くの人びとが用意しインターネット上に分散して存在しているものである。またキーワードサーチは、検索の中では最も初歩的な方法である。という意味では技術的には特段新しい訳ではない。もっとも、文章による検索や、意味内容を考慮した検索などの研究は多いが、いずれもあまり成功していない。その意味ではグーグルサーチの手法は情報検索手法としては堅実な手法だと言える。しかし再度言うが、コンテンツそのものはグーグルが用意している訳ではなくあくまでそれを検索する手段を提供している訳である。
<グーグルイメージ>
サーチと同様に画像などをキーワードにより検索するサービス。ウェブ上には画像情報が多く存在しているが、画像を直接検索するのは困難である。そこで同じページの文字情報をサーチ情報として使う。つまり、検索の結果としてウェブページのアドレスを表示するのではなく、そのページの画像を表示している事になる。
Powerpointを使ったプレゼン資料を作る際などに、文字情報に対応した適当な画像を使いたい場合が多いが、そのような場合に結構便利で私も重宝している。しかし、行っているのはグーグルサーチと同じ事であり、グーグルが情報を用意している訳ではない。あくまで検索手段を提供しているだけである。
<Gmail>
これもおなじみ、グーグルの提供するメールサービス。ウェブにアクセスできればメールの送受が行えるので利用者は多い。私も大学のメールサービスとGmailを併用しており、大学のメールのバックアップとしても利用している。何よりも大容量のメールボックスを希望者に自由に使わせているというグーグルの考え方そのものは高く評価できる。
<グーグルマップ、グーグルアース>
グーグルマップは言ってしまえば単なる地図情報なのだが、世界中の地図情報をまとめて1つのサービスとして提供しているところにグーグルマップの特徴・利点がある。たしかにその意味では、「人類の使うすべての情報を集め整理する」というグーグルの壮大な目的に合致したサービスということができる。私も学会出席などのため海外出張に行く際には、ホテルや学会会場の地図をプリントアウトして道に迷わないようにしている。
グーグルアースはその写真版とも言え、衛星写真から得られた世界各地の写真により、地球上の任意の場所を任意の縮尺で表示できる。発表された当時は「ホワイトハウスが見える」とか「私の家が見える」などと話題になったものである。最近では3Dで表示できる機能も加わっているが、ある程度拡大した写真になると解像度が悪くなって、とても実際にその場所に行った気分になるものではない。あくまで「衛星写真」の域を出ていないといったら言い過ぎだろうか。
私も当初は、旅行の際地図と同時に目的地のグーグルアースの写真をプリントアウトしたりしていたが、現在ではやはり現地の情報としては、地図にまさるものはないと思っている。しょせん衛星写真は衛星写真である。
<ストリートビュー>
これは、道路から見た風景を、360度のパノラマ映像として見る事が出来るサービスである。グーグルが、カメラを屋根に積んだ自動車を世界の代表的な都市の通りを走らせて、実際に写真を撮った結果を使って提供している。
当初は、実際にその通りを歩いている感覚になるなどの賛同意見と同時に、自分の家が写っていたり自分自身が写っていたりという事でプライバシーの侵害だなどの意見も出て、大変話題になったサービスである。
このサービスの大きな特徴は、上に述べたグーグルのサービスが、基本的には既に存在している情報をうまく集め整理して提供するということに徹しているのに対し、ストリートビューでは必要な情報そのものもグーグルが集めているという事にある。いわばグーグル自身が情報の提供者になっている訳で、これまでのグーグルのサービスを踏み出している事にある。
さて、それではストリートビューは使えるだろうか。これも私の経験なのだが、旅行の際に宿泊するホテルの周辺の風景などを事前にチェックしておいて、道に迷わず目的地に着くようストリートビューを利用したりしたが、それほど有効であるとは思わなかった。
ストリートビューで見る風景と現地に行って実際に見た風景は、やはり違うのである。私自身は、何度か道に迷ったあげくにホテルに着いた後でストリートビューを見ると、「そういえば確かにここの風景が写っているな」という経験を何度かした。私にとってはやはり地図が現地の情報を記号に圧縮した最も使いやすい情報に思える。(もっともこれは文字情報慣れしている我々の世代だからで、最近のビジュアル世代は違うのかもしれないが。)
さてまとめてみると、グーグルはたしかに、既に存在している情報を整理して人びとに提供するという意味では、大きな役割を果たしている事は否定できない。しかしそのサービスは、新しい情報を作り出す、別の言い方をすると情報から知識を作り出すという段階には達していないと言えるのではないか。私が、諸手を上げてグーグルを賛美する側に参加したいとは思わないのは、それが理由である。