シンガポール通信−イスラム国が後藤さんを殺害、今後の日本の対応は?

イスラム国が、拉致していた日本人後藤さんを殺害したとのニュースが飛び込んで来た。大変残念な事ではある。この事件は何度も取り上げて来たが、重要な問題なので再度取り上げたい。

今朝のテレビ番組を見ていると、さすがに幾つかの放送局が朝からこの問題を長時間の番組を組んで取り上げている。もっとも中にはこの問題が重すぎると考えたからか、全く無視して朝からバラエティ番組を放映している放送局もある。このような放送局は論外として、NHKも含め各社が政治家や知識人を呼んで意見を聞いている。その人達の意見をまとめると以下の3点になるのではないだろうか。

1.イスラム国がなぜテロをおこすのか。
2.日本がなぜ彼等のテロの対象になるのか。
3.日本は今後テロにどう対処して行くべきか。

いずれも重い話題であって、政治家や知識人の意見も結局のところまとめてしまうと「なぜなのか、よくわからない。どう対処していいのかよくわからない」ということのように聞こえて来る。たしかに短期間で得られる解というものはないのかもしれないが、もう少し大局的な立場からの意見が欲しい所である。

私は上記の3点に関しては、実は状況は不明確なものではなくてある程度明快に答えられる点もあると考える。以下これまでも何度も述べた事ではあるがそれぞれの点について簡潔にまとめてみよう。

まず第1のイスラム国が何故無差別で残虐なテロを起こすのかに関しては、なぜか識者といわれる人達の間でも明快な意見が見られないようである。しかしながらこれはある意味で明快な問題である。イスラム国に代表されるイスラム過激派が引き起こしているテロ行為は、欧米文化とイスラム文化の間の文化の衝突、もしくはキリスト教イスラム教の間の宗教戦争の一部なのである。

このブログで何度も書いて来たので詳細は繰り返さないが、キリスト教イスラム教の間には相容れない根本的な教義の違いがある。したがってイスラム教側から見ると、キリスト教に基づく欧米の文化、欧米の科学技術は本来は取り入れてはならないものなのである。

ところがグローバリゼーションの波に乗って、欧米の文化特にその中核である科学技術はイスラム諸国に洪水のように流れ込んでいる。なぜイスラム国などの過激派組織がテロという行為に走るのかという理由は、その流れを食い止めようとして行っている戦いであると理解するとわかりやすいのではあるまいか。

それと共に重要な事であるが、欧米の文化を否定する彼等自身が欧米の科学技術の成果である最新の武器を装備するという矛盾した行動を取っているように、この戦いは彼等に取って勝ち目のない戦いなのである。勝ち目のない戦いの中で、何か起死回生の手段はないだろうか。そのような考えがかれらを自爆テロという極端な行為に走らせているのである。

いわば太平洋戦争中に、敗戦濃厚になった日本軍が神風特攻隊という特攻行為に出たのと良く似ているではないか。神風特攻隊の隊員達(の全てではないにせよ)は、自分が死ぬことによって日本を救えるという信念の元に特攻攻撃を行った。それと同じように、自爆テロを行うイスラム国の過激派は、自爆テロは殉教行為であるという信念を持っている。そしてアラーのために敵を殺してその過程で自らが死ぬことによって、死後はアラーの元に召されるという殉教思想の元にテロ行為を行うのではあるまいか。

2番目のなぜイスラム国などの過激派が日本をそして日本人を対象としてテロを起こすのかであるが、これは1との関係で考えると理解しやすい。先に述べたように、本来この戦いが欧米文化とイスラム文化の間の文明戦争もしくは宗教戦争であると理解するならば、テロの対象とするべきは欧米の国々である。日本は本来は彼等のテロの対象ではなかった。

今回日本人が拉致され殺されるというイスラム国のテロの対象となったのは、彼等がこれまで敵とは明確に考えていなかった日本を、欧米諸国と同盟を結び欧米諸国と一体になってイスラム文化イスラム教に戦争を仕掛けている敵であると明快に判断したからであろう。

そして多分その引き金となったのは中東を訪問した安倍首相が、テロ対策に2億ドルの支援を表明した事が直接の原因であろう。この安倍首相の表明に関しては、その後日本政府は「あくまで人道支援のために2億ドルの支援を出す事を表明しただけで、対イスラム国のための軍事行為の支援に2億ドルの支援を出すといった訳ではない」と打ち消しに必死である。

しかしながら「人道支援」というのはいかにも抽象的な文言であって、イスラム国側がそれをイスラム国に対する敵対行為と考えたとしても無理はないのではないだろうか。

(続く)